講義No.11921 医学

医学的アプローチを使い、リハビリテーションを支援しよう

医学的アプローチを使い、リハビリテーションを支援しよう

刺激療法でリハビリ効果アップ

理学療法士や作業療法士と違い、医学的アプローチを用いて身体機能の回復や改善を図るのが「リハビリテーション科医」です。具体的には筋肉を軟らかくする注射や電気刺激を活用し、リハビリテーションの効果を高めます。例えば脳卒中の患者は、後遺症としてものを飲み込む際に嚥下(えんげ)障害が残ることがあります。そこで大脳皮質に磁気刺激を与えると、嚥下反射のスピードを改善することができるのです。ほかにも、喉の奥にある筋肉を直接刺激する方法も効果が見込まれています。

食事と筋トレで嚥下機能改善

一般的に嚥下障害は高齢者に多く、老化による飲み込む筋力の低下からも発生します。その場合、餅のような付着性の高い食品は咽頭に残留しやすくなるため、食品の付着性や凝集性、硬度、粘度を数値化して把握し、適切な食材を検討します。一方、寝た状態から首だけ持ち上げる、口を大きく開けるといったトレーニングも並行し、嚥下に必要な顎の下の筋肉を鍛えます。体の機能は使わなければ失われていきますから、若いうちから固いものを食べ、顎の筋力をつけておくことが望ましいでしょう。

VRを活用して楽しく運動を

体は動かせば動かすほど、機能は改善していきます。しかし、場合によっては痛みをともない、運動を続けるのは精神的につらくなることが往々にしてあります。そこでVR(バーチャルリアリティ)で気持ちが和らぐような映像を見ながら運動するなど、楽しくリハビリテーションをするための仕組みが考えられています。専用のゴーグルをつけるだけですから、ICUに入院中の患者や訪問リハビリテーションの現場でも使うことができます。
リハビリテーション医学の分野はまだ新しく、治療方針や制度が不十分なところがあります。そこで、ビッグデータを活用し早期リハビリテーションの効果検証や医療政策の立案、診療ガイドラインの作成が行われるなど、制度の整備も進められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

三重大学 医学部 医学科 教授 百崎 良 先生

三重大学 医学部 医学科 教授 百崎 良 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

リハビリテーション医学、臨床栄養学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高齢化が進む社会の中、リハビリテーションのニーズは年々高まっています。理学療法士や作業療法士に比べて、リハビリテーション科医の人数はまだ少なく、より必要とされている職種と言えます。リハビリテーション科医は単に病気を治療するだけではなく、患者の人生を丸ごと見守るような仕事ですから、誰かの幸せをやりがいと感じられる人にめざしてほしいです。
自分が好きなことでほかの人を幸せにできるなら願ってもないことですし、また人の役に立てているということは、自分にとっての支えにもなるでしょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

三重大学に関心を持ったあなたは

三重大学は、5学部を擁する総合大学です。教育・研究の実績と伝統を踏まえ、「人類福祉の増進」「自然の中での人類の共生」「地域社会の発展」に貢献できる「人材の育成と研究の創成」を目指し、学術文化の受発信拠点となるべく、切磋琢磨しています。