未来のパソコンは省エネで優秀
今は情報処理をしてから記憶
現在のパソコンは、半導体集積回路(IC)で情報を処理し、ハードディスク(HDD)で情報を蓄えています。このICとHDDは常にコンビで使われています。HDD内には小さな磁石が組み込まれていて、ICから届けられた情報を微細な「磁石」に置き換えて保存する仕組みです。ICは電源を切ると情報を忘れてしまいますが、HDDは電源を切っても情報を記憶し続けることができます。
私たちはパソコンでの作業を終えたら電源を切ります。電源が落ちるまで少々時間がかかりませんか? これは、情報を半導体で処理し、HDDに蓄積してからでなければ電力の供給を断てないからです。また、私たちが情報を映像として見るのにも時間がかかります。これは、HDDにある情報を半導体で処理した後、ディスプレーに映し出しているからなのです。
10年後は情報処理をしながら記憶
ICとHDDの機能を1つにまとめることができれば、情報の処理と記憶を同時に行うことが可能になります。そうすると電気は情報を処理するときだけ消費し、情報を記憶するときに消費することはありません。ICとHDDの機能が一緒になったパソコンは、機能が別々のパソコンに比べ省電力で済むというわけです。
そして今、これを実現させようと新技術「スピントロニクス」の研究が進められています。この技術が導入されれば、情報を「処理してから」記憶というステップが不要になるので、今以上にパソコンの処理能力がアップすることは確実。作業中のフリーズはなくなり、データの保存を意識せずに使えるでしょう。「電源を切る」という操作も不要です。電気を使うのは情報を処理するときだけ。こんな省電力のパソコンがあれば、日常で使う電気量は当然減ります。
こうしたスピントロニクスの技術を使ったパソコンが、近い将来、開発されることでしょう。
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先生情報 / 大学情報
東北大学 電気通信研究所 教授 大野 英男 先生
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