音の研究を通じて生活を便利・快適にする「音響システム工学」とは?
生活に深く関わる音について幅広く研究
ボーカロイドの「初音ミク」がネット上で人気を集めたり、iPhoneの音声案内サービス「Siri」の合成音が話題になったりと、音の問題は私たちの生活の中に深く関わっています。そうした音と人間の感覚、機器の利便性や快適性などについて研究するのが、「音響システム工学」の学問分野です。音(サウンド)の問題は、視覚(ビジュアル)と比較すると、まだまだ未開拓の領域が大きいテーマです。その核となる技術は、人間が音を聞き取る仕組み、音の測定、音の制御、そして音を使ったアプリケーションの4つの分野から成り立っています。
騒音を減らしたり、音を創り出したり
音の問題として、まず挙がるのは騒音を低減させる「静音化」であり、住宅をはじめクルマや船舶、飛行機など、さまざまな空間で求められています。具体的には、「アクティブノイズコントロール」と呼ばれる、騒音の周波数と逆位相の周波数を使って音を音で打ち消す手法が使われます。
また逆に、電気自動車のように、クルマの走行音が静かになりすぎたため、歩行者が気づきにくいという危険性が発生しています。人が不快に感じることなく、しかも気づきやすい人工音を付加する研究を行っています。さらに福祉関係では、喉頭がんなどで声を失った人に対して、口の動きや皮膚の振動を音声に変えるシステムも開発しています。
音に対する文化や心理面での快適性も重要
そうした人工音の種類や大きさを決める基準としては、人間の認知科学をベースにした人間工学の視点や技術が使われます。また、音に対する文化や国民性も考慮する必要があります。例えば、虫が鳴く声に風情を感じる日本人と、騒音と感じる欧米人の違いです。そうした音の持つ官能性(感じ方)や快適性の測定もサウンドデザインの重要なテーマです。心理学や物理学、制御など、多角的な側面から音に対してアプローチできるのが、音響システム工学の面白さと言えるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
広島市立大学 情報科学部 システム工学科 教授 石光 俊介 先生
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先生への質問
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