エネルギー分野でも活躍するバイオミメティクス(生体模倣技術)
人間の軟骨に代わる人工材料を発見
整形外科医療では、変形性関節症やリウマチなどによる痛みを除去し、運動機能を回復させる人工膝関節や人工股関節などのインプラントの開発が進んでいます。機械工学と医学がコラボレーションした医療工学と呼ばれる分野で、人間の生体の機能をまねたバイオミメティクス(生体模倣技術)により、関節の軟骨に代わる「ポリビニルホルマール」という材料が発見されました。その特長は、軟骨のように柔らかくて強く、固いスポンジ状で水との親和性や潤滑性も高く摩耗しにくいため、あらゆる速度帯でスムースに動くことです。
河川発電の効率を30%もアップ
こうしたポリビニルホルマールの特長は、再生可能エネルギーのひとつである潮流発電や河川流発電などの装置にも、活用することができます。これまで河川流発電用のプロペラと直結し、回転する軸には、発電機や機械部品が水を嫌うため、防水用のオイルシールやパッキンのリングがついていました。しかし、それらは回転軸の回転抵抗を大きくし、せっかくの潮の流れや川の流れを邪魔します。また回転軸の滑りをよくするために使う油が環境を汚染してしまいます。そこで、従来の防水シールやパッキンに替えてポリビニルホルマールを使用したところ、発電効率が30%も向上することが実証試験で証明されたのです。
あらゆる機械部品のエネルギー損失を抑制
自然エネルギーの活用が叫ばれていますが、水力発電のためにダムや道路を整備することは、自然を破壊することにつながります。そこで注目されているのが、電気の地産地消ともいうべきコンセプトで発電できる河川流発電装置です。また、電気自動車や燃料電池自動車などでも、ポリビニルホルマールの滑り部品への応用が考えられます。あらゆる速度域で低摩擦で、環境にも優しいバイオミメティクスで作られた材料を使用することで、さまざまな機械部品のエネルギー損失を抑制することが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
熊本大学 工学部 機械数理工学科 教授 中西 義孝 先生
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