小さな体に宿す大きな力! 進化する半導体
小型化をめざす電子機器の頭脳
コンピュータがソフトウェアで情報を処理するときに、欠かせない部品が半導体デバイスです。半導体デバイスは微細な部品を組み合わせて作られており、電子機器の頭脳として働きます。材料には安定性の高いシリコンなどが使われ、小型化や薄型化が進んできました。近年では、面積をさらに小さくすることは難しくなったため、半導体基板の厚みを減らして、縦方向に積み重ねる技術を磨く試みが行われています。同じ面積の中でも、部品の搭載密度が上がれば半導体の性能が向上するからです。
カメラの小型化を支えた積層技術
人間の髪の毛の太さは約50~100ミクロンですが、半導体デバイスに使われている「ウェハー」というシリコン製の円盤はそれよりも薄く、50~20ミクロンまで薄型化されています。こうした薄型のウェハーを何層にも積み重ねることで、より小型で性能の高い半導体の生産が可能です。例えばスマートフォンのカメラは、この積層技術によりセンサ部分と情報処理の部分を積み重ねて小型化に成功しました。ウェハー以外の部品に対しても、この「3次元積層技術」の研究がさらに進めば、安く性能のいい電子機器を流通させやすくなると期待されています。
接着剤と設計の課題
3次元積層技術では、専用の接着剤が必要です。半導体の積み重ね作業は、部品を一時的にガラスの上に貼り付けて固定して行います。完成後はガラスから剥がさなければならないので、接着剤には粘着力の高さと剥がしやすさの両立が求められます。特に「剥がしやすさ」の実現は難しく、より使いやすい接着剤の研究が進められています。
また、半導体の設計にも革新が必要です。例えば四角形の部品を4つに切り出して、それを4段に重ねただけでは半導体の性能はあまり上がりません。部品同士をつなぐ配線ネットワークの見直しや、電流を増幅させるデバイスの設置場所を最適化するといった工夫が必要です。より高性能な半導体を実現するために、新たな設計技術の研究が続けられています。
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先生情報 / 大学情報
熊本大学 工学部 半導体研究教育センター 教授 青柳 昌宏 先生
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