分子をデザインして世界を変える新しい性質を持つ物質を作る!
限られた元素の組み合わせが生み出す無限の物質
医薬品、プラスチック、そして私たちの体など、世の中にある物質すべてが分子からできています。しかし、その分子を形成する元素の種類はわずか100種類程度しかありません。しかも、身近なものに限ると、もととなる元素はせいぜい30種類くらいです。つまり、限られた元素からその組み合わせによって多様な分子が作られ、無限の物質が生み出されているのです。
そして分子を自在にデザインして新たなものを人工的に作り出す学問が有機化学です。また、新しい分子を作るだけではなく、既にある分子をより効率的に合成するための手法も考えます。例えば、10万円の薬を100円で作れるようになれば、その薬をより多くの患者さんに届けられることになるからです。
分子構造が決める物質の性質
身の回りの有機分子をみてみましょう。例えば、痛み止めの薬のアスピリンは、ヤナギから抽出されたサリチル酸がヒントになり、合成してできた薬です。昔からヤナギには鎮痛作用があることが知られており、その分子構造が参考にされました。また、甘い・辛いという味も分子で説明でき、唐辛子の辛さはカプサイシンという有機分子の量によって決まります。虫のコミュニケーションにも分子構造が影響しています。例えば蟻(あり)は、同じ種であっても違う集団に属する蟻は敵とみなします。蟻の見た目はまったく同じなのに仲間か敵かを区別できるのは、集団ごとにフェロモンの分子構造に違いがあるからなのです。
頭と手と好奇心でデザイン
薬学、材料科学、生物学など多くの分野のベースに有機化学があります。有機化学は物質の性質を知る基礎の学問であり、世の中を変える夢のような分子を作り出すことができる学問でもあります。実際の研究の場ではいろいろな反応剤を試したり、加熱温度を10度ずつ細かく変化させたりなど、多数の実験を繰り返します。そして成功するのは、100回のうち1、2回ほどに過ぎません。それだけに豊富な知識のほか、実践力、好奇心が求められる学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 理学部 化学科 教授 松原 亮介 先生
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