体力や運動能力の測定が重要なのは、知的・発達障害児も同じ

体力や運動能力の測定が重要なのは、知的・発達障害児も同じ

一般的でない知的・発達障害児の体力テスト

全国の中学や高校で毎年、50m走や反復横跳びなどの体力テストが行われています。これにより、生徒の体力や運動能力の全国平均値が導き出され、体育や部活動などの指導資料として広く活用されています。しかし日本では、特別支援学校に通う知的・発達障害の生徒に対してはほとんど行われておらず、彼らにどの程度の体力や運動能力があるのかが明らかにされていません。そこで知的・発達障害の生徒に対しても同様に体力テストを行い、体力を測る研究が行われています。

心肺機能と体力との関係

実験では、握力や立ち幅跳び、反復横跳び、50m走、ハンドボール投げなど一般的な体力テストとほぼ同様の項目に加えて、6分間歩行試験と肺機能検査を行い、心肺機能と体力の関係を検証します。6分間歩行試験とは、6分間でどのくらい歩くことができるかを測る試験で、健常な生徒は600~700m歩くことができますが、知的・発達障害の生徒は400~500mと差が出ています。こうした実験から、知的・発達障害の生徒は健常な生徒と比較すると身体能力が低いということが導き出されつつあります。これは脳や心肺機能が体力に与える影響も考えられますが、特別支援学校は一般の中学や高校に比べて部活動を行うところが少なく、知的・発達障害の生徒は日常的に運動する機会が少ないということも原因として考えられます。

体力テストの結果を「ものさし」として

発達障害の生徒に体力テストを行い、その結果をひとつの「ものさし」として理解しておけば、どのようなスポーツが向いているかを教育の場で活用でき、成長期に大切な体づくりに役立てられることが期待されます。また医療の現場にも共有することで、個々に合った適切な医療が可能だと考えられます。さらにスポーツを行う前後で体力テストを実施すれば、体力の向上を客観的に示すことも可能です。将来的には、外部から運動指導者を招いて、運動を行う期間とそうでない期間との体力の違いを見る研究も検討されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

神戸大学 医学部 保健学科 助教 佐藤 央基 先生

神戸大学 医学部 保健学科 助教 佐藤 央基 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

作業療法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

学生時代は成人・高齢者のリハビリに興味を持って学んでいましたが、スイミングスクールのアルバイトで子どもと接する機会がありました。病院勤務時代も高齢者のリハビリを行っていましたが、青年海外協力隊で東ティモールに派遣され、現地で知的・発達障害の子どもたちにリハビリを行う経験をしました。思いがけないこれまでの経験が今の研究に生きています。学校の勉強以外で自分が興味関心を持ったことに取り組むのはとても大切なことです。将来に向けて広い視野を育むためにも、ぜひさまざまなことに関心を持って取り組んでください。

神戸大学に関心を持ったあなたは

神戸大学は、国際都市神戸のもつ開放的な環境の中にあって、人間性・創造性・国際性・専門性を高める教育を行っています。
また、神戸大学では、人文・人間系、社会系、自然系、生命・医学系のいずれの学術分野においても世界トップレベルの学術研究を推進すると共に、世界に開かれた国際都市神戸に立地する大学として、 国際的で先端的な研究・教育の拠点になることを目指します。