遺伝子情報から治療法を見つける、オーダーメイド医療の時代へ
人によって薬の効き方が違うのはなぜ?
同じ病気にかかり同じ薬を飲んだのに、よく効く人とあまり効かない人がいます。これはなぜでしょうか?
病気の治療のために飲む薬も、身体にとっては異物です。薬は体内で一定時間効果を表した後に、分解して、尿や汗、呼気などで体外に出さなければなりません。薬などを分解するのは、肝臓にある分解酵素です。この分解酵素の働きが人によって違うために、効き方に差が出るのです。
遺伝子情報の並び順に注目
では、人によって分解酵素の働きが異なるのはなぜでしょうか。その秘密は遺伝子にあります。DNAには、その人の遺伝情報(塩基)が、あたかもコンピュータを動かすコマンド(命令)のように書き込まれています。その情報によってタンパク質がつくられ、そこからさまざまな身体の組織が生まれ、機能が整えられていくのです。
酵素(タンパク質)の働きの差は、酵素を形成するための、遺伝情報の並び順(配列)が少しずつ違うからだとわかってきました。例えば、ある人はAATGCAAの順に並んでいるのに、ある人はAATGCGAだとします。すると、その違いが分解酵素をつくるときに酵素をつくるアミノ酸配列を変化させ、機能に差をもたらすのです。このように、DNAに書き込まれた情報が人によって少しずつ異なることを「遺伝子多型」と言います。
遺伝子診断で最適な治療法を見つける
この遺伝子多型を利用したのが、最近注目されている「オーダーメイド医療」です。オーダーメイド医療とは、一人ひとり違う情報を持つ遺伝子を診断して、その人に最適な治療を行うというものです。例えば薬を服用する前に、遺伝子診断で薬の分解速度がわかれば、薬の量や飲む時間、種類が調節できます。
人は100%健康という状態もなければ、100%病気という状態もありません。複数の遺伝子の異常や環境要素が重なって病気の状態へ傾いていきます。遺伝子を研究することで、その人なりのバランスのとり方を見つけることができるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 医学部 保健学科 検査技術科学専攻 准教授 駒井 浩一郎 先生
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