新聞のように丸められる携帯電話を作るには
人工衛星から携帯電話の材料まで
携帯電話やスマートフォンを分解してみると、中には基板が入っています。ひと昔前まで硬い材質だったこの基板は、電子機器の小型化にともない柔軟性のある薄いフィルムのようになり、折り曲げられて本体に収められています。薄くペラペラなので、破れやすいのではないかと感じますが、見た目に反してかなり丈夫で、300℃という高温にも耐えられます。それもそのはず、この基板に使われる材料はポリイミドという高分子で、軽さと耐熱性に優れているのが長所であり、宇宙空間の過酷な環境でも耐える材料として、人工衛星にも使われるほどの材料なのです。
問題はガラス板を使用するディスプレイ
ポータブル電子機器の進化は小型化だけでなく、フレキシブル性(柔軟さ)も求められるようになりました。そこで問題となるのがディスプレイです。現在、ほとんどのディスプレイはガラス製で、曲げることができません。ガラスに近く透明なプラスティックもあるのですが、どれも耐熱性が低く、製造中にかかる熱(例えばはんだ)に耐えられないのです。基板のようにポリイミドを使えればよいのですが、ポリイミドは分子の構成上、どうしても色が付いてしまいます。分子の構造をうまく変えて色を抜くことができれば、曲げられる携帯電話が作れるだけでなく、液晶テレビなど多くの家電製品を軽量化することもできます。
有機物だけで作れる可能性も
ポリイミドフィルム自体は絶縁材料ですが、分子の構造を変えれば電気を流せます。そうなると従来はシリコンなどの無機物に頼っていた半導体も、有機物で作れる可能性が生まれます。すべてを有機物で作ることのメリットは、まず希少な資源を使わなくて済むこと、また有機物の分子設計は無限ともいえる組み合わせがありますから、発想次第ではいかような材料も作ることができるという点に魅力があります。
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東邦大学 理学部 化学科 准教授 石井 淳一 先生
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