「幕末から人が増え始めた?」人口の変化でわかること
江戸時代の人口は横ばい
日本の人口は20世紀になって、急激に増えました。江戸時代はほぼ横ばいでしたが、幕末から増え始めたのです。それがなぜなのか、研究者の間で議論になっています。幕末は工業化の初期段階ではありますが、明治維新の前で本格的な工業化も始まっていません。でも、その時期から人口増加が始まり、20世紀のあいだ続きました。ようやく止まったかと思うと、今度は人口減少社会が始まりました。人口が増え続けた1840年から2000年をひとつの時代と考えると、減少に転じた現在は、時代の大きな転換点であることがわかります。
個人の選択が大きなトレンドを作る
人口が増えた原因のひとつに、医学の進歩により、死亡率が下がったことがありますが、それだけでは説明できない部分もあります。私たちが意識しない、大きな流れを作り出す要因のようなものがあると言われています。それをあぶり出すためにも、個人の人生を追っていく人口学は有効です。
例えば、現在の私たちは「結婚するか、しないか」「子どもを産むか、産まないか」を、周りの人の都合で決めているわけではありません。それぞれの人が自分で考え、決めているはずです。でも、個人がよく考えて出した結論なのに、自然に時代のトレンドができます。人口に注目することで、個人に起きている目に見えない変化を、トレンドの変化として把握することができるのです。
人口学を通して、家族を考える
人口は、日本の家族のあり方を考えるうえで重要なものです。核家族化、若い世代の非婚や少子化、離婚率の増加などの社会現象は、日本の経済状態、イデオロギー、欧米化、グローバル化など、さまざまなことが重なり合って起こります。そして、実際には何がどう影響しているのか、判断するのは大変難しいものです。この複雑に絡まった糸をほどくにも、マクロの世界と個人をシンプルにつなぐ人口学は、大きな手がかりを与えてくれます。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 文学部 人文学科 教授 平井 晶子 先生
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