最も危険な噴火現象、「火砕流」の姿を追う
時速100kmで高温で駆け下りる火砕流
火山の噴火といえば、噴石や火山灰、溶岩流など様々な噴火現象がイメージされるでしょうが、その中でも最も危険だといわれているのが火砕流です。火砕流は、マグマが冷えた軽石や火山灰、ガス成分が一体となって斜面を流れ下りる現象です。火口近くに上がってきたマグマが発泡して爆発が生じるときに発生しやすく、その速度は時速100kmにも及び、また非常に高温です。その危険性から、火砕流の仕組みや発生した場合の被害の予測などの研究が必要とされています。
過去の痕跡からメカニズムを解き明かす
実際の火砕流を観察するのは非常に危険で、また火砕流が起きる頻度も高くはないため、過去に起きた火砕流の堆積物を調査する研究が行われています。例えば鹿児島県の南約40km海上にある「鬼界カルデラ」という火山では、約7300年前に火砕流を伴った噴火がありました。火砕流の堆積物を観察し、含まれる物質の種類やサイズ、構造から火砕流がどのように流れたのかを考察します。また堆積物に含まれる岩石の化学分析や磁化測定も行い、火砕流の噴火の推移や温度についても検討します。これらの結果から総合的に火砕流が発生して堆積していくまでの過程を推測していきます。このような火砕流の研究は、ハザードマップ作成などの防災につながると期待されています。
様々な火砕流噴火現象の理解
鬼界カルデラで発生した大規模な火砕流は、海上を40km渡り、鹿児島県の陸上をさらに流れたことが知られています。また火砕流が海上だけではなく海中にも流れていったことが、海底の堆積物の物理探査や掘削調査でわかってきました。火砕流が海上と海中へどのように分離していったのか、またそれぞれがどのように流れたかについて研究が進められています。
火砕流の噴火の特徴は規模、マグマの発泡の様子や組成、発生する環境などによって様々で、それぞれの噴火の特徴を理解することが重要です。また、共通する要素を見つけて全体的な現象の理解へと深めていくことも重要です。
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