災害時に、地域住民の心を前へと向かわせる「事前復興」とは?
災害前の「事前復興」
「事前復興」とは、災害発生時を想定して被害の最小化につながる都市計画やまちづくりを推進することです。災害発生後に、住民がその地域にどのように住むかというイメージを持っていると、復興に向けて前へ進みやすいと言われています。そこで大切なことが、住民が実行したいと思える「事前復興」プランの立案です。プランの作成にあたっては、巻き込む人が多くなるほど意見がまとまらず、業務は煩雑化するものです。しかし、地域住民や役所などの各関係者全員が意見を出し合い、みんなの意見を盛り込んで納得して進めることが非常に重要です。
アイデアを出して実現していく
例えば、横浜市は防災上の問題を抱える木造密集市街地が多く、また高低差がある谷戸(やと)地形のため狭い私道に階段があるなど、高齢者が大地震の際に避難しにくいという問題を抱えています。そこで横浜市中区の本郷町では、横浜市役所や住民によるまちづくり協議会と大学が一体となって「事前復興」に取り組んでいます。具体的には避難路にあらかじめ手すりを設置したり、行き止りを解消するために街中にあるフェンスにドアを取り付けるなどを検討しています。
助かる人を増やすために
加えて、住民に街を歩いてもらい、避難が困難な地域を調べて地図に色を塗り分けて認識を高めたり、大勢の人が集まる防災訓練時に、段ボール製の簡易住宅を見せることで避難のイメージを抱いてもらったりといった活動も行っています。そうした地道な取り組みを行うことで、大災害が起きたときに実際に避難行動を取って助かる人を増やし、災害後もその地に住み続けたいと思えるような動機づけを行っています。人は正しい避難情報を伝えたとしても、その情報を自分事として受け止めて避難に向かうとは限りません。しかし、地域住民の知恵や防災へのモチベーションと科学的な知識を組み合わせて、みんなが実行できる「事前復興」を考えておくことで、納得して動けるようになるのです。
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先生情報 / 大学情報
横浜市立大学 国際教養学部 国際教養学科 准教授 石川 永子 先生
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先生への質問
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