「研究すること」自体が数学研究の目的
身近な「整数」から生まれる疑問
数学の一分野に、「整数論」があります。整数そのものや、整数から派生するさまざまな現象の性質を研究する学問です。例えば、整数の約数の個数を見ると、1は1個、2と3は2個ですが、4は3個となり、5は再び2個。それが6では4個となり、7は2個といった具合に、不規則に変化します。59と60とでは、10個も変化します。この不規則な値の平均値は、大体わかるのですが、その誤差項の中身を表すにはどのような数式が必要か、あなたは思い浮かべられますか。
100年以上かけても解けない問題
整数論の歴史は古く、黎明期は古代ギリシャ時代で、近代数学に分類される領域でも100年以上前に始まったとされています。その時代から現代に至るまで、世界中の数学者たちがさまざまな定理の立証に取り組んでいますが、未解決の問題が現在も数多く残されています。と言うのも、1つの問題を解決しうる仮説を立てても、それを証明するために別の問題を解決しなければならないことが往々にしてあるからです。1つの仮説に対して、複数の数学者が異なるアプローチから証明法を考案し、それをまた別の数学者が検証して異なる説を唱えることも珍しくはありません。
「役に立つかどうか」は本質ではない
なんらかの疑問が別の疑問を生み、ようやく出てきた解答が、再び新しい疑問を生むのが数学研究の醍醐(だいご)味です。「そんな難解な学問を学んで、なんの役に立つのか」と思うかもしれませんが、何かの役に立てたくて研究を続けている数学者は、ほとんどいないでしょう。もちろん、近代的な科学技術の中には、数学によって導き出された定理や法則を応用しているものが数多くあります。しかし、研究者本人がそうした目的を持っていたわけではありません。高校で学ぶ数学をしっかり理解しておけば、そこから考えを発展させて自分なりの仮説を立て、いろいろな切り口から検証できる点が、数学を学ぶ面白さだと言えます。
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先生情報 / 大学情報
山口大学 理学部 数理科学科 講師 南出 真 先生
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数学、整数論先生への質問
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