講義No.14499 看護学 歯学

看護の力! 患者のQOLを向上させる口腔ケア

看護の力! 患者のQOLを向上させる口腔ケア

透析患者と口腔

透析療法とは腎臓の働きを代行する治療のことです。腎臓の機能が低下すると、血液をろ過して尿で老廃物を排出することができなくなるため、血液を体外に出して血液中の老廃物や余分な水分を取り除き、浄化した血液を体内に戻す血液透析(以下、透析)が必要になります。
透析は1回4〜5時間かかり、週に3回実施します。透析で余分な水分を除去するため、1回あたり3〜5キロほど体重が減り、血圧が下がったり倦怠感を感じる人もいます。透析をすることで唾液が出にくくなり、口の中の粘膜保護ができなくなったり、自浄作用が低下して口の中の衛生状態が保てなくなるため、透析患者には「口腔(こうくう)ケア」が必要です。

おいしくて楽しめる食事

透析後の倦怠感で歯医者に行けなかったり、口腔乾燥で口腔内の衛生状態が保てない状態が続き、口腔ケアを怠ると、歯周病になりやすくなります。歯周病はがんや糖尿病のリスクを高めるといわれており、口腔ケアは健康状態の維持向上のために不可欠です。
透析患者は水分制限や食事制限をしています。唾液が少ないとものを食べにくくなるため、豆腐や麺類といった喉越しがよいものを選びがちになり、十分な栄養を食事で摂れなかったり、口腔乾燥で水分摂取が増えてしまう可能性も高まります。
そこで、透析の時間を活用した看護師による口腔ケアを実施したところ、唾液の分泌が増え食事がおいしくなる、口の渇きが軽減するといった効果が見られました。

医療チームでサポート

看護師は治療に関わることはもちろん、患者の「QOL(生活の質)」を考えることも大切です。透析治療は生涯続くもので、高齢者だけでなく30~40代で仕事をしながら透析をしている人もいます。患者の生活習慣を考え、ほかの病気を併発させない予防医療も欠かせません。
よりよいケアを目指し医療チームで透析治療に取り組んでいますが、口腔ケアはまだ確立していない分野です。今後は、医師、看護師、歯科医師、歯科衛生士などが協働し、患者に合わせたプログラムの開発が必要です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

下関市立大学 看護学部 看護学科(2025年4月開設) 准教授 古庄 夏香 先生

下関市立大学 看護学部 看護学科(2025年4月開設) 准教授 古庄 夏香 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

基礎看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

もし看護師を目指すなら、今から人を観察する力をつけておきましょう。この力は、すぐに身に付くものではありません。たくさんの人と接して相手の表情やその場の空気を読み取ったり、相手の思いを推察したりして、人を見る目を養い、相手を思う気持ちを育てていきましょう。例えば、高齢者のスーパーでの買い物の様子を観察すると、その人の選ぶ食べ物や歩くペース、支払いの動作などで気づくことがあるでしょう。年齢により感覚が異なることも意識して観察し、相手に寄り添ってみてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

下関市立大学に関心を持ったあなたは

「未来の、ひとつ先へ。自由で開かれた学びとともに。」
創立以来、本学は経済学部の単科大学として歩んできましたが、2024年4月にデータサイエンス学部を開設し、2025年4月には看護学部(仮称)を設置構想中で、3学部を有する総合大学に大きく生まれ変わろうとしています。多様な学問分野、人との出会い。総合大学としての強みを最大限生かしつつ、これからも社会課題の解決に貢献していきます。
自由で開かれた学びを通して5年後10年後のすぐそこにある未来を支え、「ひとつ先」の明るい未来を創造しましょう!