看護の力! 患者のQOLを向上させる口腔ケア
透析患者と口腔
透析療法とは腎臓の働きを代行する治療のことです。腎臓の機能が低下すると、血液をろ過して尿で老廃物を排出することができなくなるため、血液を体外に出して血液中の老廃物や余分な水分を取り除き、浄化した血液を体内に戻す血液透析(以下、透析)が必要になります。
透析は1回4〜5時間かかり、週に3回実施します。透析で余分な水分を除去するため、1回あたり3〜5キロほど体重が減り、血圧が下がったり倦怠感を感じる人もいます。透析をすることで唾液が出にくくなり、口の中の粘膜保護ができなくなったり、自浄作用が低下して口の中の衛生状態が保てなくなるため、透析患者には「口腔(こうくう)ケア」が必要です。
おいしくて楽しめる食事
透析後の倦怠感で歯医者に行けなかったり、口腔乾燥で口腔内の衛生状態が保てない状態が続き、口腔ケアを怠ると、歯周病になりやすくなります。歯周病はがんや糖尿病のリスクを高めるといわれており、口腔ケアは健康状態の維持向上のために不可欠です。
透析患者は水分制限や食事制限をしています。唾液が少ないとものを食べにくくなるため、豆腐や麺類といった喉越しがよいものを選びがちになり、十分な栄養を食事で摂れなかったり、口腔乾燥で水分摂取が増えてしまう可能性も高まります。
そこで、透析の時間を活用した看護師による口腔ケアを実施したところ、唾液の分泌が増え食事がおいしくなる、口の渇きが軽減するといった効果が見られました。
医療チームでサポート
看護師は治療に関わることはもちろん、患者の「QOL(生活の質)」を考えることも大切です。透析治療は生涯続くもので、高齢者だけでなく30~40代で仕事をしながら透析をしている人もいます。患者の生活習慣を考え、ほかの病気を併発させない予防医療も欠かせません。
よりよいケアを目指し医療チームで透析治療に取り組んでいますが、口腔ケアはまだ確立していない分野です。今後は、医師、看護師、歯科医師、歯科衛生士などが協働し、患者に合わせたプログラムの開発が必要です。
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先生情報 / 大学情報
下関市立大学 看護学部 看護学科(2025年4月開設) 准教授 古庄 夏香 先生
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