電気自動車の走行距離を延ばすインホイールモータ

電気自動車の走行距離を延ばすインホイールモータ

電気自動車が抱える走行距離の問題

ガソリンエンジンはエネルギー変換効率が30%程度なのに比べ、モータは90%を誇ります。モータの方が圧倒的に効率が良いため、電気自動車はエコロジーと言われます。一方、現在使われているガソリン自動車は、一般的な乗用車の場合、1回の給油で約400km走るのに比べて、電気自動車は今のところ1回の充電で走る距離は約100kmです。これは電池の容量が限られているからです。頻繁に充電すれば問題はありませんが、走行距離が少しでも長くなれば便利ですし、エコロジーにもつながります。そこで、いろいろな角度から電気自動車の走行距離を延ばす研究が進められています。

電気自動車の走行距離を延ばすには

ガソリン自動車は、平らな道を走るのと、上り坂を走るのではガソリン1リットルあたりに走れる距離が変わってきます。同じように、電気自動車でも上り坂を長く走ったり、強い風の中を走ったり、加速や減速が多い場合は効率が落ちます。この問題を解決するのに、従来は1つのモータをどのようにして効率良く働かせるかという研究がされてきましたが、全く発想を変えた研究も行われています。それは、インホイールモータといって、タイヤ1つずつに個別にモータを積んだ自動車です。

設計思想の転換が求められる電気自動車

モータを4つに分散すると、例えば後輪には比較的ゆっくりした速度のときに効率の良いモータを、前輪には高速で走るときに効率の良いモータを配置することができます。その上で、その時の速度や路面の条件で最も効率が高くなるように前輪と後輪への電力の配分を制御することで、20%ほど走行距離が伸ばせることがわかってきました。
今までは、エンジンの代わりにモータを積むという発想で電気自動車が設計されてきました。それに対して、複数のモータを使うという設計は、目からうろこが落ちるような大胆な発想の転換でした。モータのコントローラが増えるぶんコストがかかりますが、メリットの方が大きいとして、現在注目されています。

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東京大学 大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 准教授 藤本 博志 先生

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電気工学

メッセージ

工学部をめざすなら、物理や数学を一生懸命に勉強しなくてはならないのはもちろんですが、意外に大事なのがコミュニケーション力です。物をつくるのは一人ではできないからです。さらに、体力と情熱、新しいことをやりたいという熱意が必要です。そして最も重要なのは、何事もあきらめないことです。新しい技術に問題が出るのは当たり前のことです。だからといって、元に戻るのでは科学は進歩しません。新しい技術から出てくる新しい問題を解決するのは、“さらに新しい技術”なのです。

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