質の高い医学研究は多くの患者さんを救う
臨床研究および医学基礎研究で医学進歩に貢献
医学研究には大きく分けて、臨床研究と基礎研究があります。臨床研究は、患者さんの検査所見や治療効果などを集積し、病気の予防、診断に関わる医療手段の有効性を確認したり、よりよい治療法の検証や開発を行うものです。一方、基礎研究は、マウスや培養細胞などを用いて生体の持つ機能を解析し、病気の根本となる因子や治療ターゲットとなる分子を捜したりします。両者はいずれも医学の進歩に不可欠であり、患者さんの治療に直結するような臨床および基礎研究が立案、遂行されることが重要です。
臨床研究成果による科学的根拠の蓄積
臨床研究は医療を支える土台となる、様々な科学的根拠(エビデンス)を得ることを目的として行われる研究です。医療の現場においては、この患者さんに対してはこれが最善と考える医療を行うわけですが、このような判断は過去の臨床研究を通じて得られた成果やそれらを集約して作られた<診療ガイドライン>に支えられています。また、病気の予防法の確立や新規治療法の開発、検証にも臨床研究は重要な役割を果たします。臨床研究によるエビデンスの蓄積は患者さんの利益となり、臨床医学の進歩にも貢献します。
よい医学基礎研究成果は多くの患者さんを救う
内分泌代謝分野での基礎研究の例を紹介します。そこでは、ホルモン作用異常により惹起される、肥満症、糖尿病、骨粗鬆症、動脈硬化といった疾患の病態解析や新規治療法の開発につながる研究が行われています。例えば脂肪細胞および骨細胞は、もともと同じ細胞を起源として分化・形成されますが、この細胞の分化方向を決定づける因子が見いだされています。生体においてその因子の作用を調節することができれば、糖尿病や動脈硬化の原因となる肥満を是正しつつ、骨粗鬆症も改善することが可能となり、加齢医学分野に大きく貢献できるものと期待されます。基礎研究では一つの新発見により、多くの患者さんを救うことができる可能性があるのです。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 医学部 保健学科 検査技術科学専攻 教授 遠藤 逸朗 先生
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内分泌代謝学、加齢医学先生が目指すSDGs
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