HIV検査をスピーディーに正確に!
臨床検査で重要な遺伝子解析
血液や尿の検査、心電図や脳波などの検査を行うのが臨床検査です。その結果は医師が診断する際の判断基準となるデータなので、治療に大きく影響します。最近は遺伝子検査やゲノム診断をはじめとした先端技術が導入され、その検査内容はますます複雑化しています。
特にHIV検査では遺伝子検査が深く関わっています。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染すると、最終的にAIDS(エイズ)を発症し、一度感染すると生涯、薬による治療が必要です。最近は若者の間でもHIV感染者が激増し、大きな問題となっています。
薬剤耐性HIV検査の標準化が必要
HIV治療を行う中でやっかいなのが、治療薬に対して耐性を持つウイルスの出現です。新規感染者の約10%がすでに治療薬に耐性を持つ「薬剤耐性HIV」に感染していると言われています。
HIVの薬剤耐性検査では、HIV遺伝子の配列で薬が効くかどうかを調べていきます。HIVは進化速度が速いため、患者体内では日々、遺伝子配列が異なるHIVが作られています。したがって、どのような検査方法にすれば薬剤耐性HIVを正しく判断できるのか、そしてどのようにして正しさを評価するのかが難しいところです。HIV治療薬は種類も多く、いくつかを組み合わせて治療します。どの薬への耐性なのかといった詳細な情報が必要ですが、検査機関によって使う試薬や方法にばらつきがあるのがネックとなっています。
HIV/AIDS患者の適切な治療に貢献
臨床検査では、いつ、どこで、誰がやっても同じ結果がでるよう、検査方法の標準化が必要です。HIVの適切な治療や感染拡大防止のためには、あらゆる検査機関の結果を合わせ、薬剤耐性を調査・分析していかなければなりませんが、現段階ですぐに標準化するのは難しい状況です。それでも、HIVの治療拠点病院だけでなく、各検査機関でも同じ結果が得られるようになれば、すべてのHIV/AIDS患者が、いつでもどこでも最適な治療を受けられることに大きく貢献することでしょう。
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先生情報 / 大学情報
北海道医療大学 医療技術学部 臨床検査学科 教授 吉田 繁 先生
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