タンパク質のリン酸化で情報が伝わっている
タンパク質はアミノ酸でできている
私たちの体内では、細胞から細胞へ情報が伝えられています。その情報伝達の一つの手段として「タンパク質のリン酸化」という反応があります。人間には2万~3万種類のタンパク質があると言われています。タンパク質はアミノ酸からできています。タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あり、その並び方でタンパク質の種類が決まります。なかでもセリン、スレオニン、チロシン残基がリン酸化されます。
例えば、ホルモンは血流に乗って体の各部の細胞に到達すると、細胞表面にある受容体タンパク質に結合します。この時、受容体タンパク質の中にあるアミノ酸がリン酸化され、タンパク質の形が変わります。引き続き、下流の別のタンパク質がリン酸化され、細胞の中へと情報が伝達されていきます。この細胞内情報伝達に関わり、アミノ酸をリン酸化する酵素がプロテインキナーゼです。逆に脱リン酸化することで情報の流れを止めるのがプロテインホスファターゼです。
タンパク質の構造が変わる
普段、情報が来ていない状態では、情報を伝えるタンパク質は静かにしています。そして情報が来た時には、タンパク質がリン酸化されます。タンパク質の構造が変わって、はたらき始めるのです。これを「活性化」と言います。構造が変わると、次のタンパク質をリン酸化する能力を獲得します。こうして、次から次へとタンパク質リン酸化のリレーが起こり、瞬時に情報が駆け巡っていくのです。また、タンパク質はリン酸化されることによって、細胞核の中にあるDNAをもとにして新しいタンパク質を生み出すことができるようになります。例えば、血中のブドウ糖濃度が上昇すると、すい臓からインスリンが分泌されて全身に回ります。インスリンを受け取った細胞ではリン酸化のリレーが始まり、最終的に細胞核に情報が伝わると、ブドウ糖代謝に必要なタンパク質が新たに合成されて、ブドウ糖が消費されます。身体の中ではこのような情報伝達が絶えず行われているのです。
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