眼の疾患の原因究明にも役立った「メンデルの法則」
「メンデルの法則」とは
遺伝と言えば「メンデルの法則」が有名です。形の丸いエンドウ豆と、シワのあるエンドウ豆を掛け合わせると、次の世代はすべて丸いエンドウ豆になりますが、ここからメンデルは「優劣の法則」を見出しました。父親と母親はそれぞれ遺伝子をペアで持っていて、そのうち一個ずつが子どもに遺伝します。丸いエンドウ豆の遺伝子「AA」と、シワのあるエンドウ豆の遺伝子「aa」を受け継いだ「Aa」遺伝子を持つ子どもはすべて丸い形になるのです。
遺伝子の優性(顕性)と劣性(潜性)の違い
メンデルは性質が発現するAの遺伝子を「優性(顕性、この場合は丸いエンドウ豆)」、発現しない遺伝子aを「劣性(潜性、シワのあるエンドウ豆)」と分類しました。これが「優劣の法則」です。なお「優性(顕性)」「劣性(潜性)」とは、Aが優秀で、aが劣っているということではなく、性質が表れるか否かの違いです。
遺伝学により原因が判明した疾患
「膠様(こうよう)滴状角膜ジストロフィ」という角膜の疾患があります。目の表面に凹凸ができ、白いアミロイドという物質が沈着する症状で、視力が極端に低下してしまいます。これまで原因は不明でしたが、近年「TACSTD2」という遺伝子の異常が原因であると判明しました。遺伝子を受け継ぐ際に両親共にこの遺伝子に異常があると発症するのです。これは「メンデルの法則」からの発見です。日本人の患者が多く、両親がいとこ婚の場合に発症するケースが多く見られます。従来は角膜移植で対応してきましたが、遺伝子の異常なので根本的な治療をしない限り、再発するリスクがあります。現在は、角膜を保護するソフトコンタクトレンズを装着するだけで症状の進行を遅くできることが判明しています。究極的な治療としては細胞と細胞をのりで接着させる必要がありますが、その方法についても研究が進められています。
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大阪大学 医学部 保健学科 検査技術科学専攻 教授 辻川 元一 先生
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