アートで社会や人々に問いかける
メディアとアート
「メディアアート」は1990年頃から定着し始めた芸術領域です。
大きくは2つに分かれていて、1つはテレビやインターネットなどのメディアを使った表現方法です。プロジェクションマッピングなどの技術を組み合わせたアートもこれに分類されます。もう1つは、メディアそのものについて考えるアートです。
本物かどうかわからない
ある作品を紹介しましょう。ギャラリーに本物の切り花と造花を半々の数にして一緒に生けます。水には青いインクと除草剤が混ぜられています。インターネットのサイトには、その花を1本ずつ撮影した小さな写真を並べ、クリックすると写真が大きく表示されるように設定しておきます。写真ではどの花が本物なのか、造花なのかはわかりません。毎日どの花が何回クリックされたかをカウントして、翌日には、一番多くクリックされた花を真水に移します。本物の花は、放っておけばどんどん青くなって枯れていきますが、多くクリックされた花は少し青さが抑えられて寿命も延びます。これは「テレビを見るだけでは本物の情報かどうかはわかりにくく、視聴率によって花の生命が左右されること」を表すアート作品です。
また、別の作品では、ギャラリーに入るとオレンジのいい香りが充満しています。誰もがオレンジの香りだと感じます。そしてその人に布に包まれた丸いものを渡してつぶしてもらいます。それは本物のオレンジで、つぶすと本当の香りがして、ギャラリーに入った時の香りは芳香剤だったことに気づきます。つまり、「本物だと思っているものが実はニセモノで、技術で生み出されたものであること」を表現したアート作品です。
アートで疑問を投げかける
科学技術は飛躍的な発展を続けています。例えば、人工知能の技術がもっと進展すれば、人間を超える日がくるかもしれません。メディアアートは本当にそれでいいのかを、「アート」という表現で社会や人々に問いかける、新しい時代の表現形式なのです。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 総合科学部 社会総合科学科 准教授 河原崎 貴光 先生
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メディアアート先生への質問
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- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?