平安時代の書き手の感性から学ぶ、日本人独特の「美意識」
「変体仮名」って何だろう?
1900年に、学校で習う「仮名」は「ひらがな」と「カタカナ」の2種類と決められるまで、日本人はもっとたくさんの仮名を使っていました。中国から伝わった漢字を元に、日本人は独自の文字「仮名」を発明したのですが、例えば「あ」という音を表す文字として「安」「愛」「悪」など何種類もの仮名が使われていました。さらに、「安」にも何種類もの書体(書き方)があったのです。「安」のように、1900年にひらがな、カタカナに選ばれなかった仮名は「変体仮名」と呼ばれるようになりました。仮名書道では、特に「ひらがな」と「変体仮名」を混ぜて使います。
選び方に表れる美的センス
大学で学ぶ仮名書道では、平安時代に書かれた「古筆」と呼ばれる名作を取り上げ、分析の仕方を身につけます。古筆をじっくり見ていくと、一つの作品の中でも、同じ音を表すために何種類もの変体仮名を使ったり、同じ変体仮名でも書き方を変えたりしています。なぜでしょうか?
当時の書き手は文字を変えたり、文字の大きさやつなげ方、字と字の間隔を変えたり、行の間隔をそろえないことなどによって、見た目に変化をつける工夫をしていたのです。古筆の書き手のそうした美的センスや表現を分析し、実際に筆で書いてみると、平安時代に作品を書いた人の気持ちや工夫が、感覚として現代の私たちにも伝わってきます。筆を持ってこそできる発見がたくさんあるのです。
「余白の美」の探究
仮名書道は漢字に比べて筆画が少なく、文字そのものにも紙面にも余白の部分が多くあります。それが、日本人独特の美的感覚、「余白の美」です。なぜ書き手はこの変体仮名を選んだのか、粗密をどう意図して紙面を構成しているのかなどを、古筆を通して学び、その中から自分の感覚に合う部分をとらえて組み合わせ、つなげ方や墨をつけるところを工夫して、自分の作品づくりに生かしていきます。正解は一つではありません。そこに仮名書道の奥深さとおもしろさがあります。
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奈良教育大学 教育学部 伝統文化教育専攻 書道教育専修 准教授 北山 聡佳 先生
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