「実験大国」オランダに学ぶ、誰もが等しく学ぶ社会のつくり方

「実験大国」オランダに学ぶ、誰もが等しく学ぶ社会のつくり方

大麻、売春、安楽死に「寛容な」国

オランダはヨーロッパの北西部にあり、九州と同じくらいの面積の小さな国です。チューリップや風車がシンボルとして有名ですが、大麻・売春・安楽死に寛容な国としても知られています。これらは法律で禁じられているものの、定められた条件を満たしていれば罪に問われません。また、世界に先駆けて同性婚を認めた国でもあります。こうした先進的な法律が整備された背景には、「個人の違い」を尊重し、合意に至るまで本音で議論する文化や、合理性を重んじる社会の特徴があると考えられます。オランダは、よりよい社会の実現に向けてチャレンジを続ける「実験大国」なのです。

社会的に不利な子どもたち

オランダは移民を受け入れてきた歴史が長く、近年は難民も増えて、多様な文化的背景を持つ人々が暮らしています。こうした社会においては、就学前から教育格差をこうむる「社会的に不利な子どもたち」がいることがわかってきました。例えば、オランダ人家庭に生まれてオランダ語で育つ子どもに比べて、移民的背景を持つ家庭の子どもは特に言語面の発達が遅れがちであるという調査結果があります。また、出身家庭の社会経済的地位が子どもたちの成績や進学と関係していることも指摘されています。

多様で公正な社会をめざす日本のモデルに

日本では6歳から義務教育が始まりますが、オランダでは多くの子どもが4歳から小学校に入学します。オランダには学習指導要領のような国のカリキュラムがなく、自由度の高い学校教育として有名です。しかし、就学前後の学力格差を予防・軽減するために、2歳から7歳までを対象とした教育プログラムが追加で導入されています。その効果はまだ議論の余地がありますが、社会的に不利な子どもたちの問題を社会全体で議論し、実験や試行錯誤を重ねて今の仕組みが整備されてきました。日本でもさまざまな文化的背景を持つ家庭が増えています。多様性を尊重し、公平性を実現する社会をつくっていくために、オランダの社会や教育制度から学ぶ点が数多くあるのです。

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先生情報 / 大学情報

長崎大学 多文化社会学部 オランダ語特別コース/社会動態コース 助教 福田 紗耶香 先生

長崎大学多文化社会学部 オランダ語特別コース/社会動態コース 助教福田 紗耶香 先生

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比較教育学、教育社会学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたが今、関心のあるテーマはなんですか? 教育、法律、農業、環境、都市計画、歴史、芸術などどんなテーマでも構いません。自分が問題意識を持っていることが、「オランダではどのようにとらえられているんだろう?」という問いを立てて日本と比較して考察してみると、さまざまな発見があることに気づくはずです。オランダについて深い知識や興味がなくても問題はありません。異なる社会や文化を比較し、ときに批判的な視点で考えるうえで、オランダはとてもユニークな研究対象です。

長崎大学に関心を持ったあなたは

長崎大学は、出島を介した『勉学の地』としての誇りと『進取の精神』を受け継ぐとともに、宗教や科学における非人道的な負の遺産にも学び、人々が『平和』に共存する世界を実現するという積極的な意志の下に教育・研究を行います。そして、蓄積された『知』を時代や価値観を越えて継承し、人類を愛する豊かな心を育て、未来を拓く新しい科学を創造することによって、地域と国際社会の平和的発展に貢献します。