手書きの文字に潜む情報とは? ~書道文化を学ぶ意味~
現代まで脈々と伝わる日本の書道文化
古代に中国から日本に伝来した漢字による文字文化が、日本特有の書道文化として芽吹いたのは、飛鳥時代から奈良時代にかけての時期と考えられています。平安時代には国風文化の台頭によって「かな」が用いられるようになり、漢字にも日本独特の「和様」が登場するなど、日本の書道文化は大きな発展を遂げていきました。以来、日本ではさして大きな断絶もなく、書道文化とその技法は、現代まで継承されています。
単なる記号以上の意味を持っていた文字
電話もメールもインターネットもなかった時代、手書きの文字は、人と人とのコミュニケーションにおいて非常に重要な役割を担っていました。文字を単なる記号としてだけでなく、その文字の見た目で、相手にどれだけより良い印象を与えられるかが重視されていたのです。「書は人なり」という言葉があることからもわかるように、文字を見て、その書き手の人物評価につなげるというのは、主に漢字文化圏で育まれた東アジア独自の考え方です。
平安時代の和歌の写本や手紙の類に残された書き文字などからは、「書く」という行為のクオリティが現在よりもはるかに高いレベルにあったことをうかがい知ることができます。そして、それらは当時の人々の美意識とその背景にある文化の重みを感じさせる貴重な史料となっています。
日本の歴史を学ぶ足がかりに
文字の書風は、書かれた時代や地域、書き手の個性などによって大きく異なります。筆を使って書かれる文字は、平面の動きだけでなく上下運動もともなう立体的な動きで書かれるため、書道を学び、ある程度の訓練を積むと、その書が書かれた時代や地域、書き手などを書きぐせから推測できるようになります。
手書き文字の背景に潜んでいる情報を読み解くことで、歴史上の新たな発見につながったという例も少なくありません。書道文化について学ぶことは、日本の歴史を学んでいく上でも、貴重な足がかりにもなりうるのです。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 文学部 日本文化学科 准教授 福井 淳哉 先生
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