講義No.10183 機械工学

材料に微細な粒を当てて自由自在に加工

材料に微細な粒を当てて自由自在に加工

従来の加工装置の問題点

機械部品の製造では、素材を図面で指示された形と大きさにするために、加工装置を使用します。例えば、円筒形の軸に溝をつくるとします。通常は工具を使って、材料を削って溝をつくる作業をします。そのためには、機械を制御して工具を正確に動かす必要があります。加工する形が複雑だったり、場所が複数あったりすると、当然機械の制御も難しくなります。工具の動きが複雑になれば、加工スピードが落ちます。大量に加工すると工具自体も摩耗し、交換などで余計な時間や費用が必要です。

砥粒を当てて材料を加工

このような問題点を解決するために開発されているのが、砥粒(とりゅう)加工という技術を使った加工装置です。この装置は、ノズルから微細な硬い粒(砥粒)を出し、材料に当てて対象を削るものです。従来の工具の場合は1カ所ずつしか加工できませんが、こちらの場合は同時に複数の場所に砥粒を当てることができ、加工スピードがアップします。また、加工を必要としない部分はマスクで被覆したり、砥粒のスピードや当てる間隔、ノズルの動きを制御することで複雑な形も加工できます。従来の加工装置に比べ制御が簡単で信頼性も高くなります。使用する砥粒も、使い切りではなく循環させれば、少ない消費で加工ができます。金型の作成や工具の交換も必要もありません。数千万円もする従来の加工装置も不要になるため、生産コストを抑えることができるのです。

いろいろな知識・技術の集合体

砥粒を材料に当てるというアイデアは、金属部品の製造でバリ(材料を加工した跡に発生する不要な突起)を除去する装置で同じ方法が採られており、それを転用したものです。砥粒加工装置の開発で重要なのは、ノズルの動きの制御です。そのためには、数学の知識、電気信号を物理運動に変換するアクチュエータの知識、アクチュエータの運動を制御するプログラミングの知識も必要になります。もちろん、部品をつくるために図面を作成しなければなりません。加工装置は、さまざまな知識や技術の集合体なのです。

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先生情報 / 大学情報

岡山大学 工学部 機械システム系 教授 大橋 一仁 先生

岡山大学 工学部 機械システム系 教授 大橋 一仁 先生

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機械加工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたはスマホや腕時計など身のまわりにあるいろいろな工業製品を使っていると思いますが、そこに使われている部品や製品自体がどうやってつくられているかを少しイメージしてみましょう。さらに、実際に製品の中身を確かめることができれば、将来モノづくりの世界で活躍したい人にとって役に立つと思います。
私もモノづくりの新しい技術を開発しようとしていますが、この分野は日進月歩です。進歩の中で技術を開発する楽しみがありますから、興味があるならぜひ一緒に研究してみませんか。

先生への質問

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岡山大学に関心を持ったあなたは

岡山大学は、これまでの高度な研究活動の成果を基礎として、学生が主体的に“知の創成”に参画し得る能力を涵養するとともに、学生同士や教職員との密接な対話や議論を通じて、個々人が豊かな人間性を醸成できるように支援し、国内外の幅広い分野において中核的に活躍し得る高い総合的能力と人格を備えた人材の育成を目的とした教育を行います。