材料に微細な粒を当てて自由自在に加工
従来の加工装置の問題点
機械部品の製造では、素材を図面で指示された形と大きさにするために、加工装置を使用します。例えば、円筒形の軸に溝をつくるとします。通常は工具を使って、材料を削って溝をつくる作業をします。そのためには、機械を制御して工具を正確に動かす必要があります。加工する形が複雑だったり、場所が複数あったりすると、当然機械の制御も難しくなります。工具の動きが複雑になれば、加工スピードが落ちます。大量に加工すると工具自体も摩耗し、交換などで余計な時間や費用が必要です。
砥粒を当てて材料を加工
このような問題点を解決するために開発されているのが、砥粒(とりゅう)加工という技術を使った加工装置です。この装置は、ノズルから微細な硬い粒(砥粒)を出し、材料に当てて対象を削るものです。従来の工具の場合は1カ所ずつしか加工できませんが、こちらの場合は同時に複数の場所に砥粒を当てることができ、加工スピードがアップします。また、加工を必要としない部分はマスクで被覆したり、砥粒のスピードや当てる間隔、ノズルの動きを制御することで複雑な形も加工できます。従来の加工装置に比べ制御が簡単で信頼性も高くなります。使用する砥粒も、使い切りではなく循環させれば、少ない消費で加工ができます。金型の作成や工具の交換も必要もありません。数千万円もする従来の加工装置も不要になるため、生産コストを抑えることができるのです。
いろいろな知識・技術の集合体
砥粒を材料に当てるというアイデアは、金属部品の製造でバリ(材料を加工した跡に発生する不要な突起)を除去する装置で同じ方法が採られており、それを転用したものです。砥粒加工装置の開発で重要なのは、ノズルの動きの制御です。そのためには、数学の知識、電気信号を物理運動に変換するアクチュエータの知識、アクチュエータの運動を制御するプログラミングの知識も必要になります。もちろん、部品をつくるために図面を作成しなければなりません。加工装置は、さまざまな知識や技術の集合体なのです。
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岡山大学 工学部 機械システム系 教授 大橋 一仁 先生
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