触覚センサは、最新技術を人間に近づける
人間の触覚は高度なセンサ
人間の触覚は実によくできています。物体を押さえれば、硬さを感じ、面を水平に滑らせると平滑度(滑らかさ)がわかります。感度の調整も可能です。触れる部分に神経を集中すれば、詳細な感覚が得られます。また、人に触れることで相手との間に信頼感が生まれたり、逆に他人に触れられたりすると恐怖や怒りを感じることもあります。このように、触覚は感情とも深い関係があります。
触れた時の力を光に変換する
これまで研究者たちは、触覚を計測することに挑戦してきました。物体に触れた時の圧力をさまざまな方法で電気信号に置き換えて計測してきましたが、この方法は電気を使うため周辺のノイズを拾うという欠点があります。また配線が必要です。そこで、触れたときの力を光に変換して、それを画像として出力して計測するという方法が考えられました。この方法ではアクリル板の上にゴム製のセンサ部分が付着していて、アクリル板の横からは光を当て下から画像を撮影します。物体がセンサに触れるとその力がアクリル板に伝わり、センサと接触している部分のアクリル板の光が散乱するので、光の分布と色として計測できます。このセンサでは、垂直の力はもちろん横向きの力(せん断力)も計測できます。そして光はノイズに強いので、信頼性のある数値を計測できるのです。
触覚センサで広がる可能性
触覚センサによって、そのデータを遠隔地に届ければデリケートなモノでもリモートで動かせます。ロボットに触覚センサを取り付ければ、介護ロボットへの応用が可能です。また、触覚データを再現するデバイスを作ればVR(仮想現実)で利用できます。ただし、接触するので、その強さによっては相手あるいはセンサが壊れる恐れがあります。これをいかに解決するかが次の課題です。
さらに心理学者と共同で、触覚が生み出す心理変化、特に錯覚の研究も行われています。触覚と錯覚の関係が明らかになれば、触覚を操作することで感情のコントロールができるかもしれません。
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名古屋大学 情報学部 複雑系科学専攻 複雑系計算論講座 教授 大岡 昌博 先生
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