「鮮度の高い刺身」と「ホタテアイスクリーム」が社会を救う?
どうして刺身がおいしいく食べられるのか?
日本では当たり前のように食卓に並ぶ魚の刺身ですが、どこの国でも食べられるわけではありません。日本の豊かな水産資源と高い水産技術があってこそ実現しているのです。魚が獲れてから、消費者のもとに届くまでには、時間がかかります。鮮度が良い状態で、風味を感じながら食べられるのは、鮮度を管理する方法や、冷凍・解凍技術のたまものです。例えばホタテは、グリコーゲンの量が増える夏が食べ頃で、その状態を保てる温度があります。このような魚介類の成分変化や、保存の適温は、種類ごとに分析されています。劣化が早いカキも、今ではチルド保存によって1カ月間鮮度を保つことができ、海外へ輸出されるようになりました。
魚介類で作るたこ焼きやアイスクリーム
「かにかまぼこ」は、食感や風味がカニに似ていますが、スケトウダラのすり身です。このように、加工されて食卓に届く水産物もあります。細かく粉にしたり、ペースト状にしたりする加工技術の開発も進んでおり、魚の粉を小麦粉の代わりにした、たこ焼きが作れます。ペーストにしたものをさらにクリーム状にしていくと、アイスクリームになります。これらは、魚介類に含まれる良質のたんぱく質や脂質の成分を失わずに、栄養価値が高いまま提供できるのです。このように料理のレシピが広がれば、小さい子どもからお年寄りまで幅広く、食べてもらうこともできるでしょう。
長寿社会でますます注目される水産物
科学的に確立された鮮度管理や加工技術の開発は、限りある水産資源を無駄にすることなく、より多くの消費者のもとへ届けることを可能にします。食糧の安定した確保や食品ロスの問題の解決につながるでしょう。また、昨今は人生100年時代と言われ、健康への注目がより一層高まっています。もともと栄養価の高い水産物の流通を増やすことはもちろん、加工した新商品を開発し、健康機能性の高い食品を作ることで、長寿社会への貢献にもつながるのです。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 農学部 食料生産環境学科(令和7年度から農学部 動物科学・水産科学科 水産システム学コース所属) 教授 袁 春紅 先生
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