工学との連携で患者をサポート! 理学療法士に求められる能力
人工筋肉を使った新たな装具
脳卒中などで半身まひになると、肩の筋肉もまひして脱臼しやすくなります。従来の治療方法では腕と肩に三角巾を巻いて対処していましたが、肩を支えるための新たな装具が、理学療法士と工学研究者の共同で開発されました。装具には筋肉に見立てたチューブが何本も装着されており、空気を送ると伸び縮みします。チューブが縮むと腕が持ち上がり、下に抜けていた肩が正しい位置にはまる仕組みです。このような人工筋肉は、三角巾を使ったときよりも患者の肩を安定して固定できます。
医学と工学の連携
装具開発の事例のように、理学療法や医療の分野では、工学との連携が進められています。患者を支援するロボットの効果を検証するために、カメラを用いた三次元の動作解析をすることも珍しくありません。また、患者を診断する際も超音波を使って体内の状態を調べたり、客観的な数値から治療の効果を判断したりしています。こうした機器を適切に使いこなして治療に役立てる必要があるため、将来の理学療法士にはテクノロジーへの対応能力がますます求められるようになります。理学療法士の養成課程でも、テクノロジー対応能力を育むための授業内容が検討されています。
人間ならではの能力も必要
テクノロジーに対応する新たな能力が求められる一方で、従来から臨床現場で重視されてきた非認知能力もさらに重要になります。例えば物事を批判的に見て根拠を明らかにする力、コミュニケーション力、自己管理能力、共感性、道徳観などが当てはまります。こうした能力は、AIなどのテクノロジーで代替することが困難です。新しい技術に適応しつつ人間の得意分野を生かして患者に接すれば、よりよい理学療法を提供できるでしょう。非認知能力は座学だけでは培われずグループワークなどによって磨かれることがわかってきましたが、まだ教育方法には改善の余地があります。非認知能力を育てるための教育方法や、能力を判断する指標などの実践と研究が続いています。
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畿央大学 健康科学部 理学療法学科 教授 庄本 康治 先生
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