病原微生物から人を守る「マクロファージ」の働き
病原微生物などを食べる「マクロファージ」
人には外から侵入する病原微生物やウイルスを排除する免疫機能があります。たとえそれらが体内に入っても、免疫の働きによってほとんど排除されます。ここで活躍するのが、白血球の一種である「マクロファージ」と呼ばれる食細胞です。文字どおり、この細胞は病原微生物などを細胞内に取り込み、食べてしまいます。しかも、食べるだけではなく、殺菌・分解して分解物を生命維持に再利用するという優れた機能を備えています。
取り込んで食べる時間は、わずか数分間
体内に病原微生物などが侵入した場合、まずそれらが自己以外のものであることを認識する必要があります。そこで機能するのが食細胞の表面にある「受容体」です。これには鍵穴の働きがあり、それに合う鍵を持つ相手を異物と判断し取り込みが始まります。異物の周りを取り囲むように膜を伸ばして細胞の内部に引きずり込んで、活性酸素や酵素によって殺菌・分解します。取り込んで食べ終わるまでに、わずか数分しかかかりません。この過程で働くのが「スネア(SNARE)タンパク質」です。
免疫機能を解明し、創薬や治療法開発に役立てる
スネアタンパク質は、食細胞が異物を感知すると、接触面を広げるために細胞内部の膜成分を表面に輸送して融合させる働きをします。この膜融合に働くスネアタンパク質には複数の種類がありますが、その中の1種類でも働きを止めてしまうと、異物の除去機構が正常に働かなくなってしまいます。
このような微細なメカニズムの解明は、単に仕組み自体を深く理解するというだけでなく、新しい薬の開発や治療法の確立につながる可能性があります。先天的に免疫機能に疾患のある人や、関節リウマチや膠原病(こうげんびょう)などの自己免疫疾患になった人が、正常な免疫機能を取り戻すための基礎的な知見を提供することにつながるのです。
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鳥取大学 医学部 生命科学科 助教 櫻井 千恵 先生
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