力と技の産業用ロボットを支える制御技術
産業用ロボットの6つの軸
強い、大きい、賢い。工場で車の組み立てや溶接などの作業を受け持つ産業用ロボットの特徴は、この3つのキーワードに集約されます。世界で稼動している産業用ロボット約100万台のうち、日本で稼動しているのは約33.3万台です(2009年時点)。北米全体で約16.6万台、ドイツで約14.4万台ですから、日本は世界的にみて群を抜いて多い台数です。
産業用ロボットの動きは人間の腕の動きをモデルにしていて、垂直多関節型の場合、動く方向は空間の3次元、つまり座標軸XYZの3方向です。これに回したり傾けたりする動きを各方向に追加し、合計6つの軸(人間の関節にあたる部分)があれば、思い通りの位置で人の腕と同じような作業ができます。しかも「繰り返し位置決め」の精度も、多くの関節を持つにもかかわらず1mm以下と大変精密です。
制御技術が、高い精度の決め手
例えばモノをつかんで動かす場合を考えてみましょう。人間の片方の腕で10kgもの重さを精密に動かすことは不可能ですが、産業用ロボットなら軽々とやってのけます。ただしこのとき10kgの重さがロボットの腕にかかっているので、急に止めたり動かしたりすると関節部分に負荷がかかり、位置のずれが起こります。
それに対処するためにロボットの各関節のモーターはサーボコントロールという方法で制御されています。ずれが生じると、その向きの反対方向にモーターを微小に動かして、ずれを打ち消し、動的に平衡状態を保ちます。
さまざまな分野で活躍するロボット
日本での産業用ロボットの主な用途は組み立て作業です。異なる形の部品をさまざまな向きに置いたり差し込んだりするには、単純な組み立て装置よりも人間の動きに近いロボットが適しているのです。
また自動車産業では溶接作業で広く使われています。複雑な形のボディを重い溶接装置で溶接するのは大変な作業ですが、ロボットならそつなくこなすことができます。そのほか塗装や磨きなどのさまざまな精密加工技術の分野で作業を人間に代わって行っているのです。
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金沢大学 理工学域 機械工学系 教授 浅川 直紀 先生
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