超音波や「泡」で、物質を効率的に分離する!
牛乳に超音波を当てるとバターがつくれる?
火がついているわけではないのに、水が湯気に変わる「加湿器」を不思議だと感じたことはありませんか? 超音波を当てることで、水を「霧」に変化させるのが加湿器のメカニズムです。水に限らず液体に超音波を作用させると、特定の成分を分離させたり、水分を霧にして「飛ばす」ことで、加熱せずに液体を濃くしたりできます。
身近な例としては、牛乳に超音波を当てることで乳脂肪分とそのほかの水溶液(乳清)とを分離させ、バターをつくることができます。お茶をいれた後の茶がらに超音波を当て、お湯に溶け出さなかったカテキンを取り出す活用法も研究されています。
工業分野でも大活躍しそうな超音波のパワー
医薬品をつくる時、純度を高めるために、水に溶かした後で冷やして結晶化させます。ところが時々、冷えているのに結晶化が始まらないトラブルがあります。そんな時には超音波を一瞬当てればすぐ解決、無事に結晶ができ、製造を続けられます。また、ナノテクノロジー分野の素材加工で、同じスケールのナノ粒子だけを集めるのは大変なのですが、超音波を活用すれば、特定サイズのナノ粒子だけを容易に選別できるようになります。このように、超音波による物質の分離技術はさまざまな分野に応用可能なのです。
「泡」がレアメタルを回収してくれる?
超音波以外にも、ユニークな分離技術の研究が進められています。例えば、レアメタルのガリウムを「泡」を使って取り出す方法です。半導体や太陽電池の廃棄物に含まれるガリウムをリサイクルするには溶解液から取り出すのが一般的ですが、不純物が混じっている液体の中からガリウムだけ取り出すのは効率の悪い作業でした。ところが、溶解液に界面活性剤を加えて空気を流して泡をつくると、泡の表面にガリウムが選択的に吸着されるという現象が明らかになったのです。この手法はリサイクル技術開発の賞も受け、廃棄物から高効率にガリウムが回収できるようになると期待されています。
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鹿児島大学 工学部 先進工学科 化学工学プログラム 教授 二井 晋 先生
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