モノづくりには欠かせない、異なる金属同士を接合する技術
異なる金属同士はうまく接合できない
自動車などさまざまな製品には、複数の金属が使われています。それらを接合するには、「接着剤を使う」「ネジ締めをする」「溶接・接合する」という方法があります。
接着剤には、接着部で壊れやすい問題があります。また、ネジを使用すると重量が増加し、ネジ締めの作業時間も加わります。溶接の場合、同じ金属同士であれば、高温にして溶かせば比較的簡単に接合することができます。ところが、異なる金属だとうまくいきません。金属には原子が動く拡散という現象があります。これは、水中にインクを入れると中で広がるような現象です。温度が融点以上だとこの反応が速すぎて、接合面で2つの金属原子が混ざって新しい金属ができてしまうのです。このようにしてできた金属は、元の金属より脆くて壊れやすく、力を加えると接合部分で割れてしまいます。
材料の融点以下で接合させて一体化
そこで、接合部分に新しい金属ができないようにする必要があります。具体的には、2つの材料を接触させて擦らせて、摩擦熱で温度を上昇させます。この方法では融点の7割程度の温度で異なる金属を金属結合することができます。拡散の反応スピードが溶接より遅いため、接合部分にできる金属も限りなく薄くなり、接合部分は元の材料以上に強くなります。
異材接合の今後の課題
異なる金属を接合させる「異材接合」を固体のまま行うと、必要な強度を確保することができ、ネジなどほかの材料が不要なため軽量化できます。また、材料を擦らせるだけなので、接合の作業も短い時間で済みます。
ただ、問題点もあります。材料を擦らせる必要があるため製品の構造によっては接合できません。また、元の材料強度が非常に高いものでは接合部で破壊することもあります。また、金属結合できない樹脂などの非金属と金属とを接合するニーズも高まっています。このような課題解決に向けて、現在もさらなる研究が進められています。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 工学部 応用理工学科 マテリアル生産科学科目 准教授 小椋 智 先生
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