講義No.10342 音楽

プログレッシブ・ロックはなぜ難しい? 融合から生まれた音楽を探る

プログレッシブ・ロックはなぜ難しい? 融合から生まれた音楽を探る

プログレッシブ・ロックは難解?

クラシックやジャズ、民族音楽などの要素を取り入れたプログレッシブ・ロックという音楽ジャンルがあります。7拍子などの変則的な拍子の曲、20分以上ある曲なども多く、理解が難しい音楽といわれてきました。しかし構成や和声(コード進行)などを理論的に分析すると本質的な特徴が見えます。
例えばプログレッシブ・ロックはクラシックの和声から一部採り入れたりすることで、従来のロックとは異なる響きを生み出しています。明るい響きの長調や暗い響きの短調などパターン化されている和声はいくつもありますが、プログレッシブ・ロックは既存の概念では説明しきれない独特の和声を使っていることがわかります。

融合から生まれた音楽

プログレッシブ・ロックに限らず、音楽は融合実験を重ねて枝分かれしてきました。例えば13世紀にヨーロッパで生まれたモテットという声楽ジャンルは、グレゴリオ聖歌の旋律に、世俗で親しまれていた旋律を融合させたものです。融合実験は恒常化したジャンルを打破するときに見られる現象で、歴史の中で繰り返されてきました。現代でも星野源などのアーティストがブラックミュージックと日本の音楽要素を融合させ、イエローミュージックという独自の音楽を作ろうとしています。

学問的な音楽の聴き方

音楽の特徴は、ボーカルの声の使い方やリズム、曲の構成などに注目すると理解しやすくなります。例えばロック歌手であるエルヴィス・プレスリーが作った1950年代の曲は、しばしば最高音でメロディーが始まります。当時は冒頭から徐々に盛り上がりサビで最高音になる構成が一般的だったため、エルヴィスの音楽はとても斬新でした。ロックが持つ勢いのよさやインパクトは、エルヴィスらの音楽に端を発していることが、こうした研究からもわかります。
ポピュラー音楽の研究はアーティスト自身の背景や社会情勢に注目しているものが主流ですが、楽曲そのものを理論的に分析することで魅力を形作る要素が見えてくるのです。

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先生情報 / 大学情報

フェリス女学院大学 音楽学部 音楽芸術学科 准教授 川本 聡胤 先生

フェリス女学院大学 音楽学部 音楽芸術学科 准教授 川本 聡胤 先生

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音楽学、音楽理論、ポピュラー音楽研究

先生が目指すSDGs

メッセージ

進路選択をするときは、あなたが好きなことだけに注目するのではなく、大学でなければ学べないことは何か、という視点も大切にしてほしいと思います。例えば音楽理論は大学を逃すと本格的に学ぶ機会があまりないため、独学が難しい分野のひとつです。せっかく進学するのであれば、興味関心のある事と専門家から学べる機会のどちらも大切にしましょう。
また、大学では科目を自由に選択できるので、そのときも「今しか学べないこと」や「教えてもらわなければわからないこと」を選ぶ視点にして、考えてみてください。

先生への質問

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フェリス女学院大学は、1870年に日本初のキリスト教系女子教育機関として誕生して以来、
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