演奏法だけじゃない、オルガンを通した音楽教育の可能性
人間の娯楽とオルガンの深い関わり
人間の文化や生活とオルガン(パイプオルガン)には、深い関わりがあります。その歴史は紀元前のギリシャ・ローマの時代にさかのぼり、円形競技場での闘技会において競技者を鼓舞するために派手な音を出す道具として使われていました。現代でも、大リーグやアイスホッケーなどで試合中に電子オルガンの演奏が鳴り響くのはその名残といえるでしょう。一方、無声映画の時代、欧米の劇場にはシアターオルガンと呼ばれる楽器が設置され、映像に合わせて演奏をしていました。オルガンは、その長い歴史の中で娯楽として身近に使われてきた一面があるのです。
オルガンから広がる多くの学び
パイプオルガンの音色は、中学校の音楽の授業で聴いたことがあるのではないでしょうか。バッハの「フーガ ト短調」は、中学校で鑑賞教材として扱われます。おそらく、フーガ形式、オルガンという楽器の仕組み、オルガンが隆盛を極めたバロック時代、教会と音楽の関係や歴史的背景など、さまざまな学習のポイントがあり、教材にふさわしいと考えられているからです。オルガンという楽器を一つの手がかりに学ぶこと、それは小学生や高校生でも可能なのです。音楽、楽器、その背景にある文化に触れて、人間の英知、想像力、クリエイティビティなど多くの学びが広がるはずです。
オルガンを通した音楽教育の可能性
小・中・高の学年齢に応じた視点の置き方により、オルガンという楽器を通してさまざまな学びが可能です。例えば、小学生対象であれば「楽器との出会い」からの興味を引き出す授業(できれば実際に見て、音色を聴く)、中学生の場合は「フーガ ト短調」から「音楽(形式)、楽器の歴史的背景を学ぶ」などです。学びのねらいや学習事項の段階的な学年設定によって、音楽・芸術全般への学習の広がり、そして教科横断的学習への水平展開も期待できます。楽器を軸においた音楽鑑賞学習の手法を探る……そこには次世代につなぐ持続可能な文化の発展につながる可能性が秘められているのです。
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先生情報 / 大学情報
エリザベト音楽大学 音楽学部 教授 福原 之織 先生
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