古代の楽器はどんな音色を奏でていたのだろう?

古代の楽器はどんな音色を奏でていたのだろう?

古代の楽器の音色を再現する

博物館などに所蔵されている、貴重で実際に音を鳴らせないような古代の楽器を3Dプリンタで複製し、その音色を再現しようという研究が行われています。リコーダーなどの管楽器に空気を吹き込むと音が出るのは、管の中の気柱が共鳴するためです。フルートや尺八など、「エアリード楽器」と呼ばれるリードを使わない管楽器では、音色を決める要素として管の形が非常に重要です。したがって、楽器の形を完全に再現することで、オリジナルの楽器と同じ音を出すことができると考えられます。

3Dプリンタで楽器を複製

まず楽器をX線CTでスキャンし、コンピュータで3Dモデルを作成します。そのデータをもとに、3Dプリンタで出力して楽器の形を複製します。完全な形に複製するためには、データの修正や、3Dプリンタの調整が必要です。
音の再現度を検証できるよう、実際に吹いて比べられる楽器から複製の研究が始められています。複製した楽器とオリジナルの楽器の音を録音し、多くの人が聴き比べた結果、一部の楽器経験者にしか違いがわからないほど、再現の精度が高いことが確認されました。実験に使われた100年前の尺八やバロックオーボエは竹や木で作られています。3Dプリンタで復元したものはプラスチック製ですが、素材の違いは音色にほぼ影響しないこともわかりました。

古代の音色再現への第一歩

3Dプリンタの楽器複製技術を使えば、持ち運びが困難である貴重な楽器の音色を、いろいろな場所で楽しむこともできます。尺八のような手作りの楽器は、楽器それぞれの音色が違い、それが習得する難しさのひとつとなっています。指導者の使う楽器を複製して同じ音色を再現すれば、中学校や高校での和楽器学習にも役立てることができるでしょう。そして音の再現性のデータを集めて精度を上げていくことで、近い将来、聖徳太子が聴いたかもしれない尺八の音色など、いにしえの楽器の音を体験することができると期待されます。

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先生情報 / 大学情報

工学院大学 情報学部 情報デザイン学科 准教授 高橋 義典 先生

工学院大学 情報学部 情報デザイン学科 准教授 高橋 義典 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

情報学、情報デザイン学、音響学

先生が目指すSDGs

メッセージ

音響学は、さまざまな分野にまたがった学問です。私が取り組んでいる工学系のほか、振動の制御を研究する機械系、コンサートホールの音響や遮音に関する建築系、聴覚などの医療系、さらには心理学と結びついた分野もあります。多種多様な研究者が集まる学会はとても刺激的です。
音の研究に携わるチャンスはたくさんあるので、いろいろな音の問題に関心を持ってほしいと思います。音に興味があるなら、ぜひ一緒に学びましょう。工学系をめざすのであれば、数学をしっかりと勉強しておきましょう。

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工学院大学は、2017年に創立130周年を迎えた、伝統のある大学です。2019年4月から、専門性を高めた知識を得られるように、先進工学部の「応用物理学科」と「機械理工学科」では各学科を2専攻に分け、きめ細かな学修ができる体制に変わりました。
応用物理学科には応用物理の分野を究める「応用物理学専攻」と宇宙関連分野を学ぶ「宇宙理工学専攻」を、また機械理工学科には従来の機械の知識を学びながらグローバルな視点を養う「機械理工学専攻」とパイロットライセンスの取得をめざす「航空理工学専攻」を設置しました。