動かないものを動かす! 実写にはないアニメならではの魅力とは?
一枚一枚の絵で命を吹き込む
アニメは、少しずつ異なる静止画を積み重ねて動きを生み出します。その制作では2つの考え方が必要です。1つ目は、人や車など実際に動いているものを絵としてどう再現するかです。あまりリアルな動きを追求すると、実写との違いがなくなってしまいます。2つ目は、意思を持たず全く動かないものをどう擬人化して表現するかです。これはアニメ独特の表現で、命を吹き込む作業です。そもそも、アニメーションの動詞形animateには、「命を吹き込む」という意味があります。
日本と海外のアニメの違いとは?
アニメの原型は、複数の紙に書いた連続する絵を素早くめくる「ぱらぱら漫画」などです。やがてフィルムが開発されると、紙をめくるのとは異なり、常に一定のスピードで映像を見せられるようになりました。ディズニーなどの海外アニメは、1秒間の24コマにそれぞれ異なる24枚の絵を使用する「フル・アニメーション」です。これに対して日本のテレビアニメは、1秒あたり8枚、つまりフィルム3コマ分を1枚の絵で表現する「リミテッド・アニメーション」という技法が用いられました。これを普及させたのが手塚治虫の『鉄腕アトム』です。リミテッド・アニメーションは絵を描く時間が大幅に短縮されるメリットがあり、日本のテレビアニメの標準になりました。
アニメは「ウソ」が大事?
アニメは、実写やCGとは違い、リアルな動きを追求するだけではないので、うまく「ウソ」をつくことがポイントです。例えばカッコよく見せたいときは、はったりを効かせたオーバーアクションやタメた動きで表現します。特に日本のアニメは、動きの中に歌舞伎で使われる「見栄を切る」しぐさ、日本舞踊や空手の型を使うなど、シルエットのきれいな様式美やカッコよさを取り入れたりしています。このように、ウソと言っても全くのウソではなく、また見ている人にウソだと感じさせないように仕上げるのがアニメーターとしての腕の見せどころなのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸芸術工科大学 芸術工学部 メディア芸術学科 教授 吉本 拓二 先生
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