「プラス1」で食生活を改善 公衆栄養学に大切な教育と環境改善
食事を改善するためのプラス1
2019年にナイジェリアの母子を対象とした食事調査が行われました。食品群をいくつ摂取したかなど食生活に関する質問のほか、母親の学歴や経済状況なども回答してもらうものです。すると学歴や収入が低い家庭ほど、摂取している食品群が少ないという結果が出ました。一人ひとりの経済状況や学歴などに立ち入ることは困難ですが、栄養面から改善策を提案することは可能です。例えば主食のみ摂取するのではなく、お粥にナッツ類をプラス1品追加するなど、現地でも手軽に実践できる方法を提案します。
農業との連携
食生活の改善は現地の保健センターのスタッフと協力して実施されますが、農業部門とも連携します。食事へのプラス1を実現するためには、栽培している作物の種類を増やすことも大切だからです。例えばトウモロコシのみを栽培していた畑でほかの野菜も作るためには、農家の協力が不可欠です。しかし農家が作物の栽培方法を知らない場合もあるので、栽培する作物の提案だけでなく、農業指導も行います。また消費者にも、買い物をするときに主食だけではなく、栄養素を補うための食品を選べるように改善策を提示します。しかし知識はあっても行動に移すことが難しい人も多いので、教育や実践をくり返したり、地道に環境を改善したりして、人々の行動を変えることが大切です。
レベルに合わせた食事の実践
栄養教育をする際、理想の食事メニューを見せていい人と、見せてはいけない人がいます。例えば栄養知識が豊富な人は、「プラス1だけでは食事の改善にはならない」ととらえられてしまいますので、理想のメニューを提示して説明します。しかし栄養の知識があまりない人に初めから理想的なメニューを見せるとハードルが上がってしまい、実現できないと思われてしまいます。そのためプラス1など簡単にできることから提案し、食事に対する理解度の進捗に合わせて理想的なメニューを実現する方法を提案します。相手によって情報の出し方を変えることも、公衆栄養学では重要な視点なのです。
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先生情報 / 大学情報
長野県立大学 健康発達学部 食健康学科 准教授 草間 かおる 先生
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