自治・分権の視点から自治体議会のあり方を考える
私たちと自治体
私たちは、“ゆりかごから墓場まで”行政活動との関わりを持ちながら人生を歩みます。そして、それらの行政活動の多くは、住民に最も身近な自治体が担っています。自治体は、単なる行政主体ではなく、民主主義に支えられた独自の政治システムをもち、また住民が主体的に参加しています。住民の自治のための存在だからこそ「自治体」なのです。私たちの生活を豊かにするためには、住民本位の自治体運営をいかに実現するかを私たち自身が考え、行動していくことが必要なのです。
自治体議会の役割は何か
自治体には、首長と議会という2つの住民代表機関が存在し、両者の相互作用によって政策が形成されます。首長と議会は、どちらも住民が直接選挙によって選出するという意味で同様の存在ですが、首長は1人が選出される一方、議会は複数の議員が選出されるという点で違いがあります。首長は、争点を明確化し、政策の選択肢を提示することに優れています。一方、議会は、少数意見を含めた多様な民意を明らかにし、幅広い合意形成を行うことに優れています。多様な住民の意思反映を実現することが議会の役割であり、首長と議会が政策の質と住民の意思反映をめぐって競い合うことを通じて、民主主義の価値を実現することが求められます。
住民との関係性の再構築
しかしながら、自治体議会が住民の代表機関として信頼されているとは言いがたい状況にあります。近年、議員のなり手不足が問題視されていますが、女性議員の少なさ、年齢の偏りなど、議会が「住民の縮図」になり得ておらず、多様な住民の意思反映という議会の存在意義そのものを揺るがしかねない状況です。議会の果たすべき役割を再認識し、住民に開かれた議会を実現することが求められます。実際に、住民と議会が気軽に意見交換できる場づくりや、住民との議論を重ねた政策づくりなどの改革に取り組む議会が登場しています。これからの議会のあり方は、私たちから縁遠い問題ではなく、私たちが自治の主体として自ら考えていかなければならない問題なのです。
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