地域の健康づくりに、「コミュニティのちから」で取り組む!
地域住民の健康を支える活動
私たちは日常の中で、個人の努力で健康づくりを行っていると思いがちですが、実は、地域や所属しているさまざまなコミュニティにおいて、多くの人や制度に支えられている部分があります。そうした、地域やコミュニティにおける健康維持・増進や病気の予防などを考える学問が「公衆衛生学」です。
長野県には、古くから「保健補導員」という健康ボランティアの制度があります。第二次世界大戦中、保健に携わる専門職である「保健師」をサポートするために地域の人たちが自主的に始めた活動に端を発し、行政と地域の橋渡しの役割を担ってきました。同様の活動を行っている地域はほかにもありますが、長野県のようにほぼ県の全域にわたって長年続いているというのは珍しい例です。
地域それぞれの多様な取り組み
長野県の平均寿命は全国トップレベルで、がんや心疾患による死亡率が低いことが知られています。その要因のひとつに、医療・保健の専門職や保健補導員などの公衆衛生活動によって、健康づくりに対する意識が地域に根づいていることが挙げられます。一方で、こうした活動は、長野県内でも地域によって内容が異なり、それぞれの地域に合ったやり方で住民に溶け込んでいるのが特徴です。
大事なのは「バナキュラー」
地域の健康づくりに大事なのは、科学的なものの見方に加えて、「バナキュラー(Vernacular)」と向き合うことです。バナキュラーとは、「地域に根ざした考え方・価値観」といった意味です。例えば、長野県は食塩の摂取量が全国的にも高いという特徴があります。これは、習慣として野菜を漬物にして保存してきたことなどから、塩分が多めの食生活が根づいた結果と考えられます。そこで、地域ぐるみで減塩を推奨する活動が積極的に行われてきました。
地域やコミュニティには独自の習慣や考え方があるため、健康づくりの取り組みもおのずと変わっていきます。まずはバナキュラーと向き合うことが、地域の理解と協力を得ることにつながり、人々の健康改善、すなわち公衆衛生につながっていくのです。
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先生情報 / 大学情報
長野県立大学 健康発達学部 食健康学科 准教授 今村 晴彦 先生
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