医薬品や化粧品にも使われるのに、嫌われ者なのは誰?

医薬品や化粧品にも使われるのに、嫌われ者なのは誰?

油のイメージが一変する

「油」は取りすぎるとさまざまな病気のリスクがありますが、悪い面だけを見てすべて切り捨ててしまうのは、あまりにもったいないことです。例えば、油は化粧品の原材料の1つにもなっていて、肌を保護してやわらかくする役割を担っています。また、魚油や植物油に含まれる「n-3系脂肪酸(オメガ3)」には血中の脂質を下げる作用があるほか、バランスよく取ることで皮膚炎などの炎症を抑制することもわかっています。中でも魚油の「DHA・EPA」は医薬品として病気の治療にも使われているのです。

DHA・EPAの可能性

DHA・EPAが注目されたのは、これらを多く含むアザラシやクジラをよく食べていたイヌイットが心疾患にかかりにくいとわかったことがきっかけでした。それからDHA・EPAが体によいという認識は広まり、最近の研究では、DHA・EPAが腎不全の進行を遅らせることもわかっています。腎不全は腎臓だけでなく全身の臓器に悪影響を与えますが、そのメカニズムは解明されていません。腎不全がほかの臓器にどう影響するか、そしてDHA・EPAを取ることでどのような効果が現れるのか、今後研究が進む中で新しいことが見えてくるでしょう。
また、DHAとEPAでは性質が異なることもわかってきました。うつ病にはEPAが、アルツハイマーにはDHAが効果的だとされますが、なぜ作用が異なるのかははっきりしていません。研究が進めば、さらにおもしろい発見があるかもしれません。

脂質の研究が導く未来

今、海洋資源の減少は大きな問題となっており、いつか魚が食べられなくなる日がくると言われています。そうなった時、体で作れないDHAやEPAはどう摂取すればいいのでしょうか。現在、魚ではなく菜種の植物や藻からDHA・EPAを作る研究も進められていて、すでに商品化もされています。限られた資源の中で生きていく私たちにとって、脂質の研究は健康だけでなく、未来を切り開く可能性をも秘めているのです。

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城西大学 薬学部 薬科学科 准教授 片倉 賢紀 先生

城西大学 薬学部 薬科学科 准教授 片倉 賢紀 先生

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栄養生理学、薬科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

めざす道が決まったら、ゴールまで最短ルートでたどり着きたいでしょう。でも、それを実現する道は1つではなく、そのゴールも変わることがあります。私自身、エイズウイルスに対する薬を作りたくて薬学部に進学しましたが、今は違う研究をしています。やりたいことにひたむきに努力することは大事ですが、それは自分が知っていることの1つでしかありません。本当におもしろいことは、あなたの視野の外にあるかもしれません。新しい経験する機会があれば、できるだけ逃さずチャレンジしてください。

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