行動から考える、「食」による健康と幸福

行動から考える、「食」による健康と幸福

「何を食べた?」+「どう食べた?」が大切

家族や先生から「栄養のあるものを食べなさい」と言われたことがあると思います。何を食べたかも大切ですが、実は、食事にまつわる行動も大切です。例えば、いつ食べるか、誰と食べるか、食べる速さはどうか、などです。食材をバランスよく食べることに加えて、食行動を考えることが健康を後押ししてくれます。

性格によって食行動は違う?

性格は寿命と関係があることが知られています。その背景に食行動が介在する可能性が報告されています。まだまだ研究途上ではありますが、例えば外交性が高い人は、飲酒や喫煙の頻度が高く、自己管理能力が高い人は、果物と野菜の摂取量が多い傾向にあるという研究報告があります。
人の性格は、本質の部分では変わりません。ということは逆にその本質に沿った栄養指導を行えば、限りなくオーダーメイドに近い栄養指導につながるのではないかと、その可能性を探ります。

環境にも影響を受けている食行動

私たちは自分で食事を選び、行動しているようで、実はたくさんの環境因子の影響を受けています。そのため、環境を整えることも大切です。以前イギリス政府は、国民の多すぎる食塩摂取量を、環境を変えることで減らす施策を展開しました。そのひとつがパンを使ったものです。国民がパンから多くの食塩を摂取していることを突き止めた政府は、食品会社と協力し、市販のパンに含まれる食塩を10年以上かけて少しずつ減らしました。その結果、国民は知らず知らずのうちに食塩摂取量を減らし、また国全体では心臓系の病気で亡くなる人が9000人も減ったのです。
日本でも2020年4月1日から、「栄養成分表示」が義務化されます。表示を健康的な食品選択に活用してもらうことが目的ですが、国民全員が本当に活用する、またはできるでしょうか? 活用しないのであればそれはどのような人たちで、なぜなのでしょう。このように、行動の裏側に隠れたいろいろな要因を明らかにし、健康で幸せな食生活を支えることも栄養学には求められています。

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神戸学院大学 栄養学部 栄養学科 講師 鳴海 愛子 先生

神戸学院大学 栄養学部 栄養学科 講師 鳴海 愛子 先生

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栄養学

メッセージ

あなたの身の回りには、いろいろな疑問が転がっています。スマートフォンの画面や音楽に集中して狭い世界に閉じこもるのではなく、周りに目を向けてみましょう。例えば電車やバスの中で周囲を見回してみると、さまざまな光景が広がっていることに気づきます。
その中から、例えば、栄養学の研究のテーマになるような疑問が見つかることもあるでしょう。また、人の行動の特徴が見えてきたりして、それが栄養指導や事業を考えるときのアイデアにつながっていきます。

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