チーム医療で取り組む患者さんの「苦痛からの解放」
全人的苦痛(トータルペイン)
がんや心筋梗塞(こうそく)などの重い病気にかかると、患者さんは激しい痛みを感じます。痛みといっても、病気の症状による「身体的な苦痛」だけではありません。病気に対する不安や、病院にいる孤独などを感じる「精神的な苦痛」。病気による経済の困窮や、仕事を休むことで社会的な立場を失うかもしれない恐れなどの「社会的な苦痛」。人生が急転換することへの悩み、死への恐怖などの「スピリチュアルペイン」。患者さんはこれら4つの苦痛に耐えているのです。
痛みを和らげる緩和ケア
病院では、これらの痛みを和らげる「緩和ケア」が行われています。医師を中心に、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、理学療法士、栄養士などの多職種がチームとなって治療にあたります。第一に、患者さんにとって一番辛い身体的な痛みの緩和をめざします。医師は痛みの症状に合わせた薬の処方を考えますが、薬剤師は薬に対して別の視点を持たなければなりません。
薬には主作用と副作用があります。主作用として、ある部分には効果を見せるものの、同時に副作用として別の部分に違う効果をもたらすことがあります。その場合、投与量を変えるのか、別の薬に代えるのか、副作用をケアする薬を追加するのかを考えるのが薬剤師の役割です。チームにおける薬剤師の役割は、薬物療法の最適化に努めることです。薬剤師の視点で薬物治療支援を考え、副作用を回避しながら最大限の治療効果を上げることに取り組んでいます。
多職種が連携するチーム医療
身体的な痛み以外の3つの痛みは薬だけでは取り除くことができません。そのためチーム医療には精神科の医師や、心理療法士、ソーシャルワーカーのほか、患者さんが希望すれば施設で働く牧師や僧侶なども加わることがあります。多職種が連携しながらそれぞれのポジションで患者さんのことを考え、カンファレンスの場で協議を重ねながら治療の方針を決めていくのがチーム医療です。そこで薬剤師は、医薬品の専門職としての立場から発言することが求められているのです。
参考資料
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湘南医療大学 薬学部 医療薬学科 教授 加賀谷 肇 先生
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