最後までその人らしく生きることを支える「緩和ケア」
さまざまな苦痛を抱えるがん患者を支える
今やがんは、2人に1人がなる時代です。がんは痛みや全身のだるさなどの「身体的な苦痛」、不安、抑うつなどの「精神的な苦痛」、経済的な問題や仕事上の問題などの「社会的な苦痛」、そして、死への恐怖、人生への根源的な問いなどの「スピリチュアルな苦痛」をともなうことがあります。
こうした全人的な苦痛を抱える患者さんや家族に対して、治療をしながら、がんになっても自分らしく生き、人生を全うするためにさまざまなサポートを続け、生活の質(QOL)を維持・向上するのが緩和ケアです。
チームケアで行う「緩和ケア」
緩和ケアは医師や看護師だけでなく、薬剤師、ソーシャルワーカーなどでチームを組んで行い、きめ細かに対応します。例えば、麻薬などの薬に対する不安には薬剤師が対応し、食べやすい食事を栄養士が考えます。つらい気持ちを抱えている場合には、心理士や宗教家がじっくりと話を聞きます。緩和ケア病棟に入院するのか、在宅で緩和ケアをするのか、患者の症状や家族の状態によっても、チームのメンバー構成は変わります。それぞれの職種が専門性を持ちながら協力して一人の患者さんを支えます。
早期からの緩和ケアの普及が課題
2010年にアメリカのハーバード大学が、緩和ケアを早期のがん患者から行うと寿命を延ばす効果があるという結果を報告しました。この結果はまだ確定的ではありませんが、がんと診断されたら早期から病変の治療と同時に緩和ケアを行うことは患者・家族の生活の質を維持・向上するために重要です。
緩和ケアの重要性が増す中で、その緩和ケアがどれだけ効果をもたらしたのかを評価し、すべての患者さんや家族によりよいケアを届ける体制づくりを進めることが課題です。医師・看護師に対する教育や病院内や地域のシステムづくりなど、すべての患者さん・家族に質の高い緩和ケアを提供する体制づくりが検討されています。
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