薬の知識と工夫でがん治療に貢献! 患者を支える薬剤師の役割
がん治療における薬剤師の役割
抗がん剤は、がん細胞を攻撃する一方で、正常な細胞にもダメージを与えてさまざまな副作用を引き起こします。例えば、手足のしびれや痛みが起こる末梢(まっしょう)神経障害や、皮膚や爪の障害は、患者の「日常生活の質(QOL)」に大きな影響を与えます。薬剤師は患者が抱えるこうした問題を解決するために、副作用のメカニズムを解明したり、新しい予防法・治療法を開発したりしています。また、薬の飲み方や塗り方の工夫で副作用を軽減する方法を検討するなど、さまざまな方法で患者のQOL向上に向き合っているのです。
現場の「困った」を解消し患者に還元
がんの治療薬は日々進歩していますが、がんによる周辺症状を和らげる薬は多くありません。例えば「モーズペースト」という院内製剤は、がんが皮膚に広がった際の滲(しん)出液やにおい、出血を改善するために、約50年前から一部で使われていました。しかし、この軟こうは調製後すぐに固まってしまうため、忙しい医師が積極的に使うのは難しく、普及が進んでいませんでした。そこで薬剤師が薬学の知識を駆使して、軟こうの成分を見直して柔らかく塗りやすいように改良したところ、より多くの患者の症状改善に役立てられるようになったのです。
チーム医療でQOL向上をめざす
時には、看護師の何気ない一言が患者の問題解決につながることもあります。ある看護師は、抗がん剤の点滴中に爪障害の予防のために手指を冷やしている患者は、しびれの症状も軽いことに気づきました。そこから薬剤師の研究により、手指の冷却は末梢神経障害の予防にも効果があることがわかったのです。また、皮膚障害の薬を患者にうまく使ってもらうために薬剤師が指導用の動画を作成したところ、使用量の増加と副作用の軽減につながりました。
これからの薬剤師には、薬を出すことだけではなく、ほかの医療スタッフと連携しながら、薬学の知識と技術を武器に問題解決につなげる思考が求められているのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
湘南医療大学 薬学部 医療薬学科 教授 佐藤 淳也 先生
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