講義No.14557 薬学

薬の知識と工夫でがん治療に貢献! 患者を支える薬剤師の役割

薬の知識と工夫でがん治療に貢献! 患者を支える薬剤師の役割

がん治療における薬剤師の役割

抗がん剤は、がん細胞を攻撃する一方で、正常な細胞にもダメージを与えてさまざまな副作用を引き起こします。例えば、手足のしびれや痛みが起こる末梢(まっしょう)神経障害や、皮膚や爪の障害は、患者の「日常生活の質(QOL)」に大きな影響を与えます。薬剤師は患者が抱えるこうした問題を解決するために、副作用のメカニズムを解明したり、新しい予防法・治療法を開発したりしています。また、薬の飲み方や塗り方の工夫で副作用を軽減する方法を検討するなど、さまざまな方法で患者のQOL向上に向き合っているのです。

現場の「困った」を解消し患者に還元

がんの治療薬は日々進歩していますが、がんによる周辺症状を和らげる薬は多くありません。例えば「モーズペースト」という院内製剤は、がんが皮膚に広がった際の滲(しん)出液やにおい、出血を改善するために、約50年前から一部で使われていました。しかし、この軟こうは調製後すぐに固まってしまうため、忙しい医師が積極的に使うのは難しく、普及が進んでいませんでした。そこで薬剤師が薬学の知識を駆使して、軟こうの成分を見直して柔らかく塗りやすいように改良したところ、より多くの患者の症状改善に役立てられるようになったのです。

チーム医療でQOL向上をめざす

時には、看護師の何気ない一言が患者の問題解決につながることもあります。ある看護師は、抗がん剤の点滴中に爪障害の予防のために手指を冷やしている患者は、しびれの症状も軽いことに気づきました。そこから薬剤師の研究により、手指の冷却は末梢神経障害の予防にも効果があることがわかったのです。また、皮膚障害の薬を患者にうまく使ってもらうために薬剤師が指導用の動画を作成したところ、使用量の増加と副作用の軽減につながりました。
これからの薬剤師には、薬を出すことだけではなく、ほかの医療スタッフと連携しながら、薬学の知識と技術を武器に問題解決につなげる思考が求められているのです。

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先生情報 / 大学情報

湘南医療大学 薬学部 医療薬学科 教授 佐藤 淳也 先生

湘南医療大学 薬学部 医療薬学科 教授 佐藤 淳也 先生

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薬学、臨床薬学

先生が目指すSDGs

メッセージ

将来自分がどんな仕事をしたいのかを漠然とでもいいので、考えてみてください。そのためには部活動、アルバイトやボランティア、旅行、時に恋愛など、高校生でできる経験を積むことが大切です。医療の現場では、未解決な問題も多く、これらはヒトの技術と熱意で解決されています。医療には、問題を見つけ出して解決する熱意や技術が重要です。専門技術は、大学で学ぶとして、高校生時代は、熱意を養う時期です。外に出て積んだたくさんの経験は、たとえ回り道に見えても、きっとあなたの将来に生きてくるはずです。

先生への質問

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  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

湘南医療大学に関心を持ったあなたは

湘南医療大学は、2015年4月に横浜に開学した医療大学です。保健医療学部(看護学科・リハビリテーション学科)に加え、2021年4月には薬学部(医療薬学科)を開設し、2学部3学科体制となりました。
多くのグループ病院や施設をもつ湘南医療大学は、横浜・湘南地域で、優秀な医療のスペシャリストを育てていきます。ぜひ、夢ナビ講義をお読みいただき、興味をもち、医療への道を目指してみませんか。そんなあなたの夢を、湘南医療大学が応援します。