病気になる前に酸化ストレスを発見するには
身近で危険な酸化ストレス
人間は生命活動を維持するために、酸素を体内に取りこんでエネルギーを作り出しています。ところが取り込んだ酸素から活性酸素とよばれる反応性の高い物質ができてしまうことがあります。通常、活性酸素は抗酸化酵素などによる還元反応によって無害なものへと変えられます。しかし、偏った食生活や睡眠不足などで体にストレスがかかると、体内の酸化と還元のバランスが崩れ、活性酸素が過剰な状態になります。これを酸化ストレスといい、慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器系疾患や、がんなどのさまざまな病気が酸化ストレスと関係していると考えられています。
早期発見は難しい?
酸化ストレスが関わる病気は早期発見することが理想です。しかし実際は病気が進行して重い症状が出る段階にならなければ見つけられないことが多く、軽症のうちに治療できないという課題があります。そこで酸化ストレスが関わる病気の早期発見につながる指標や、病気の進行度を調べることができるような物質の研究が行われています。その候補の1つが赤血球のタンパク質です。活性酸素によってタンパク質が酸化されると、構造に変化が生じます。酸化修飾という、酸化反応が起きた目印ができるのです。このような酸化修飾されたタンパク質が増えると、病気になる可能性が高まったり、症状が進行したりします。
手がかりになるタンパク質
もし血液や尿など、健康診断で採取するものから体の酸化ストレス状態を検査できれば、多くの人々を対象とした病気の予防や早期発見に貢献できるでしょう。そこで赤血球のタンパク質を標的とした研究が始まりました。生体試料から新規の分子種を探す、あるいは分子の質量を量る実験には質量分析とよばれる手法がよく用いられます。近年の質量分析の技術進歩により、タンパク質を構成するアミノ酸がどのような修飾を受けているかまで詳しく分析することができます。この手法を用いて、酸化修飾タンパク質と病気の関係を明らかにし、早期発見するための検査方法を開発することが期待されています。
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湘南医療大学 薬学部 医療薬学科 助教 須藤 遥 先生
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