抗がん剤の副作用を抑える、支持療法薬の使い方
がん治療で抗がん剤を適切に使うには?
がんの治療に使われる抗がん剤は副作用が出やすいため、副作用の症状を予防したり治療効果のあるさまざまな「支持療法薬」を組み合わせながら治療を行います。そのためがんの薬物療法をよりよくするためには、抗がん剤と支持療法薬の両方について考える必要があります。
抗がん剤については、投与のタイミングや薬を使う順番などの全国的なガイドラインが整備されてきました。ただし抗がん剤と組み合わせる支持療法薬の使い方は医師や薬剤師の判断に任せられており、標準化があまり進んでいませんでした。患者さんの心身の負担を軽減するために、支持療法薬の適切な使用方法が研究されています。
吐き気止めの課題
例えば、抗がん剤の種類によっては副作用にかなり強い吐き気が出て、患者さんはつらい思いをします。その吐き気を抑える「制吐薬(せいとやく)」は、ほとんどが海外での臨床試験結果に基づいて作られており、体格などが違う日本人には量が多すぎたり、強すぎる種類を使ったりしている可能性があります。そこで日本人が同じ基準で制吐薬を使っても問題がないか、研究が始まりました。まずは吐き気の感じ方が日本人と外国人でどれくらい違うのか分析が行われています。一般的には日本人は外国人よりも敏感に吐き気を感じるといわれているため、適切な制吐薬を投与するなど、より心身への負担が少ない使用方法が検討されています。
全国のがん治療を改善する
抗がん剤を患者さんに投与するときの処方計画書を「レジメン」といい、支持療法薬が含まれます。薬を投与する量や順番などを時系列順に整理して記載したものです。医療現場ではレジメンがないと抗がん剤を投与することはできません。抗がん剤と支持療法薬の使用方法の研究がさらに進み、拠点病院などのレジメンに反映されるようになれば、がん治療を受ける患者さんにとってより負担の少ないものにできるはずです。
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湘南医療大学 薬学部 医療薬学科 教授 加藤 裕久 先生
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