講義No.10809 薬学

副作用はどうすれば軽減できる? 医療を支える薬のデザイン

副作用はどうすれば軽減できる? 医療を支える薬のデザイン

副作用を減らすための薬のデザイン

薬には副作用があり、患者さんの治療を妨げる原因となります。例えば抗がん剤のドキソルビシンには、心不全や骨髄抑制や出血などの重い副作用があります。副作用を抑えるためには薬のデザイン(設計)を工夫しなければなりません。
そこで開発された薬がドキシルです。がん細胞の血管は、健康な血管に比べて透過性が高く、大きなサイズの薬が通過出来ます。この特徴を利用するためにドキシルは抗がん剤をリン脂質でできたリポソームで包み、サイズを大きくすることでがん細胞選択的に薬を届ける工夫をしています。このように、必要な部位に必要なタイミングで薬を届ける仕組みをドラッグデリバリーシステムといいます。

治療法のない病気の薬のデザイン

たくさんの薬が作られていますが、未だに治療方法や薬の存在しない難治性疾患が問題となっています。慢性閉塞性肺疾患COPDは、たばこや有毒ガスによって呼吸を行う肺胞が破壊され、未だに有効な治療薬はありません。
この破壊された肺胞の再生に有効な分子を探したところ、インテグリンという分子が肺胞の再生を行うことがわかりました。しかしインテグリンは大きな分子のため、そのままでは肺に届けることはできません。そこで、ミセルという膜でインテグリンを包み込んだインテグリンナノ粒子が開発されました。

再生医療のための薬のデザイン

最近では、再生治療やがん治療で、細胞を使った治療が行われており、細胞などの管理も薬学の重要な課題となっています。幹細胞は、様々な種類の細胞に変わることの出来る細胞ですが、外からの刺激によって品質が悪くなる事が大きな問題です。そこで、幹細胞デリバリーシステムのデザインとして、幹細胞を保護膜で包み込むことで、外部からの刺激に強いシステムが開発されました。幹細胞デリバリーシステムの利点として、安定した再生治療を実現できるため、移植回数を減らし回復までの期間を短縮することができるのです。

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山陽小野田市立山口東京理科大学 薬学部 薬学科 講師 堀口 道子 先生

山陽小野田市立山口東京理科大学 薬学部 薬学科 講師 堀口 道子 先生

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メッセージ

学問の奥深さや勉強することの楽しさを知って頂きたいです。勉強を科目ごとに分けて考えているかもしれませんが、社会では様々な学問が混ざり合っています。例えば薬を作るためには、薬学の知識だけではなく、体の仕組み、経済、材料工学など多様な視点が必要です。学問同士のつながりや関連性を考え、社会的な現象と自分が学んでいる分野を結びつければ、きっと勉強がさらに楽しくなるでしょう。問題を発見する力、解決策を考える力、そして好奇心は、将来あなたの助けとなってくれるはずです。

先生への質問

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山陽小野田市立山口東京理科大学は「確かな基礎教育」を掲げ、基礎学力を育成する体系的な教育を行っています。2016年4月、公立大学法人へと移行、2018年4月西日本初の公立の薬学部を設置し、工学部・薬学部の二学部体制となりました。東京理科大学の姉妹校として、基礎学力を重視した実力主義の教育を受け継ぎ、工学・薬学の専門的な学術を教育・研究するとともに、地域産業界・医療界で活躍する人材を育成します!