終末期の患者さんと最期まで向き合う、緩和ケアの必要性
患者さんとともに歩み、苦痛を取り除く
緩和ケアとは、苦しむ患者さんの苦痛を取り除くことです。病気の初期段階から終末期の患者さん、すべてが対象となります。看護師はあらゆる患者さんにとって、緩和的存在であることが求められます。患者さんの痛みの状態に合わせて薬を投与したり、安楽な姿勢を整えるのはもちろん、日々会話をする中で、その人がどんな苦痛を抱え、痛みのもとはどこにあるのかを探っていきます。患者さんと二人三脚で歩み、ともに苦しみを和らげる方法を見つけ出す、それが緩和ケアです。
苦痛を見極め適度な距離で接する
終末期の患者さんの苦痛は4つに分けられます。身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛の3つに加えて、人生の意味への問いや死生観に関するスピリチュアルペインの計4つです。人生の終わりを前にしたとき、残された家族のことが心配になったり、なぜ自分がこんな目にあうのかと思ったり、それぞれの苦悩があります。その不安な気持ちを人にどう伝えたらいいか、わからない場合もあるでしょう。そうなると、看護師に対して素っ気ない態度を取ってしまうこともあります。しかし、看護師はそれを表面的にとらえず、その態度の裏にはどんな心の状態があるのかを考え、適度な距離で対話を試みます。患者さんが表出するすべての態度をしっかりと受けとめることで、看護師は患者さんから信頼してもらえるようになるのです。
人生の最期まで生きることを支えるケア
終末期の患者さんは、治療の選択や療養場所など、自分の意思を決めなければならないことがあります。看護師は、患者さんや家族の望みを一緒に整理して考え、最期の時間をどう生きたいかを決定するお手伝いをします。かつては、生前から死を考えることはタブー視されがちでしたが、近年は、自分が人生の最期をどう生きたいのか、あらかじめ家族や親しい人と話し合っておくべき、という考えが広まりつつあります。その実現のためにも、患者さんと最期まで向き合う緩和ケアが欠かせないのです。
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聖徳大学 看護学部 看護学科 准教授 西田 三十一 先生
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