分子が勝手に並ぶ!? ~界面と界面活性剤~

分子が勝手に並ぶ!? ~界面と界面活性剤~

水と油が混ざるのはなぜか

洗剤で油汚れが取れるのは、界面活性剤が入っているからです。水と油が接している面のことを界面といいます。水と油は混ざらず分離しますが、界面活性剤があると、水と油の界面に界面活性剤分子が吸着して界面の性質を著しく変えることができます。この性質を界面活性といいます。
界面活性剤の分子は、水になじみやすい親水基となじみにくい疎水基からなっています。界面活性剤分子が、水と油の界面で、親水基を水に接し、疎水基を油に接するように吸着し、油を取り囲むことで油を取り除けるのです。

使われる物質で多様な応用が可能に

界面は水と油の間だけではありません。水と空気、固体と液体など異なる物質や状態の間には界面が存在します。そこに界面活性剤があれば、界面活性剤は界面に吸着して界面活性を示します。また、界面活性剤分子が集まることを会合といい、その結果形成される構造体を会合体またはミセルといいます。ミセルには、球状のものもあれば、棒状や板状のものもあります。界面活性剤のこれらの性質を利用して、食品や日用品、化粧品、薬品などさまざまな製品が作られています。界面活性剤が取り囲んでいる微粒子が液体であればエマルション、固体ならサスペンションといいますが、マヨネーズは周りが水で中に油が入ったエマルション、墨汁は中に煤(すす)が入ったサスペンションです。

生体でも界面活性物質が活躍している

界面活性剤の性質は、濃度や温度、共存物質などを変えることで制御可能です。会合によって自発的に構造体を形成するため自己組織化と呼ばれる現象とも関係しています。このような界面の性質や構造、機能を研究する学問を界面化学といいます。実は、界面活性を持つ物質は生体でも活躍しています。例えば、細胞膜を構成する主成分は界面活性剤と同じように親水基と疎水基を持つ脂質と呼ばれる分子です。この脂質の膜にタンパク質が埋め込まれたり吸着したりしています。界面化学を学べば、生体の仕組みに触れることもできるのです。

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先生情報 / 大学情報

宇都宮大学 工学部 基盤工学科 応用化学コース 教授 飯村 兼一 先生

宇都宮大学 工学部 基盤工学科 応用化学コース 教授 飯村 兼一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

界面化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

界面化学は、食品や化粧品、医薬品などの身近な製品からナノテクノロジーなどの最先端技術まで、幅広く応用されています。界面というユニークな場でのさまざまな現象を扱い、そこにある物理化学的な原理や現象を利用した機能性を研究します。生体にも多くの界面が存在することから、化学や物理のみならず、生物にも関係する学際的な分野です。興味がある方は、ぜひ一緒に研究しましょう。
自然科学の研究では、理系科目だけでなく、情報を得たり発表したりするために国語や英語の力も必要です。今学んでいる全てが将来につながっています。

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