体にいい油は酸化が早い? 食品の栄養とおいしさを守れ!
酸化しやすい魚の油
古くなったクッキーやポテトチップスを開封して嫌なにおいがしたら、それは油が酸化したことが原因です。脂質は体にとって欠かせない栄養素ですが、食品に含まれる油には常に酸化の問題があります。油が酸化すると、風味が損なわれるだけでなく、栄養機能も低下してしまいます。中でも、EPAやDHAなど体によいとされる魚の油(不飽和脂肪酸)は、特に酸化しやすい性質を持っています。同じ不飽和脂肪酸の植物油には、抗酸化剤としての作用があるトコフェロール(ビタミンE)が含まれていますが、トコフェロールを魚の油に添加しても抗酸化効果は高くなりません。そこで、魚の油の酸化を抑制するための方法が研究されています。
既存の抗酸化剤の効果をアップ
そのひとつが、既存の抗酸化剤の効果を高める研究です。油の中で酸化が起こりやすいのは、空気や水と触れる界面の部分です。したがって、界面に抗酸化剤を集められれば、抗酸化の効果が上がると考えられます。抗酸化剤は分子の極性が低いと油層に溶けやすく、高いと溶けにくいので、一般的な油では極性が高い抗酸化剤のほうが溶けずに界面に集まるので効果的です。例えば、トコフェロールは抗酸化作用のある水酸基と長い炭化水素鎖を持つ極性が低い抗酸化剤ですが、疎水性の炭化水素鎖を切れば極性を高くすることができます。
一方、マヨネーズや牛乳のようなエマルジョン系(乳化系)の油は、水の中に油が散らばっているため、極性の低い抗酸化剤が効果的です。しかし近年、界面活性剤(乳化剤)を添加することで、極性の高い抗酸化剤の効果も高められることがわかりました。そのメカニズムについては、現在研究が進められています。
新しい抗酸化剤の発見
また、これまでにはない抗酸化剤の探索も行われています。コーヒー豆に含まれるコーヒー酸はポリフェノールの一種で、トコフェロールよりも高い抗酸化作用を持つことが確認されました。天然物由来の新しい抗酸化剤として期待されています。
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先生情報 / 大学情報
県立広島大学 生物資源科学部 地域資源開発学科 准教授 山本 幸弘 先生
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脂質化学先生への質問
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