農村の自然を守れ! 里地里山は生き物の宝庫
農村の豊かな自然に迫る危機
日本の里地里山は、人の手が加えられることで形成されてきた二次的自然環境です。そこでは多くの生き物が生息し、豊かな生態系が育まれてきました。広く浅い止水域である水田は、湿地の生き物に最適な生息空間です。水田のまわりに張り巡らされた農業水路は全国で4万キロメートルにも及び、水田と水路のネットワークを形づくって、魚類の産卵と生育の場を提供しています。カエルは水田などの水域と山林の陸域で生活し、それを捕食するフクロウが山に暮らしています。
ところが、近代的な農法への変化や、外来種の持ち込みにより、これら水田まわりの生き物は激減の危機にあります。そこで、農村の豊かな生態系を守るための研究が行われています。
行動を追跡して保全につなげる
研究では、魚の通り道の確保や外来種の駆除、フクロウの巣箱の設置、子どもたちへの自然教育などのほか、生き物の追跡調査が行われています。生態系の頂点である猛禽(もうきん)類のフクロウは環境変化の影響を受けやすいため、GPS発信機を用いて行動圏を調べてデータ化し、工事の範囲や時期を考慮する資料として環境アセスメントに役立てています。
一方、サンショウウオやカエルなどの小動物には、PITタグと呼ばれるマイクロチップを埋め込んで、専用の読み取りアンテナで探知します。両生類のサンショウウオは水中や陸上で見られますが、調査の結果、実際は土の中でかなり長い時間を過ごしていることがわかり、生態保全へつなげられると期待されます。
人と生き物が共に生きられる社会を
農村の生き物を守るためには、そこに住む農家の人たちが健全に農業を続けられること、人と生き物が一緒に暮らしていける社会環境を守ることが必要です。行政支援や農村で暮らすためのビジネスモデルの研究や、生き物をはじめとした農村の豊かな自然の魅力をPRして、都会の人にもっと農村について知ってもらう仕組みづくりへの取り組みもはじめられています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。